615_R4「自己調整」最終稿【久保田】
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(下線部は筆者による) (1) 中谷素之 『自己調整力とは何か』 月刊教職研修 教育開発研究所 2019 6月号 p.88 (2) 朝日新聞EduA 『「自ら学ぶ力」、どうすれば育てられる?自己調整学習の専門家に聞く』 2020年5月6日 p.2 https://www.asahi.com/edua/article/13340047 2022.6.22 (3) 京都市教育委員会 京都市総合教育センター 『令和3年度研究紀要』 2022.3 (4) 中央教育審議会『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について』(答申) 平成28年12月21日 p.10 2022.6.22 12 (2)自己調整する力の汎用的な発揮を目指して 平成28年度答申には、2030年の社会と子どもたちの未来について、以下の記述がある(4)。 社会の変化は加速度を増し、複雑で予測困難となってきており、しかもそうした変化が、どのような職業や人生を選択するかにかかわらず、全ての子どもたちの生き方に影響するものとなっている。社会の変化にいかに対処していくかという受け身の観点に立つのであれば、難しい時代になると考えられるかもしれない。 このような時代を見据えて、生徒たちには自ら見通しを立てたり、社会や自身を取り巻く状況を把握したりして、適切な方法で主体的に課題を解決することが求められている。また、自ら振り返りを行うことで、新たな解決方法を見いだしたり、発展的に課題を解決したりしていくことも必要とされている。自己調整する力は正にこれからの時代を生きる生徒たちに必要な資質・能力であり、生活の様々な場面で発揮していくべき汎用的な力だといえる。 この自己調整する力は、もともと我々に備わっている力だといえよう。メタ認知を働かせることによって自分の力量などを正確に把握した上で見通しを立て適切な方略を選択することや、動機づけを高めることによって主体的に課題の解決に向かっていくことは、日頃の生活の中で場面を問わず行っていることである。自覚か無自覚か、我々はこの自己調整する力を汎用的に発揮することで、同じ失敗を繰り返すことなく、よりよく生きていくことができているのである。 しかし、自分で考えることなく他人の指示どおりに動いていたり、自己調整に対してあまりに無自覚であったりすると、場面が変わった時や未知の課題、想定外の大きな課題に直面した時に上手く自己調整を行うことができなくなることがある。また、これからの社会では課題を解決するための方略は複雑であり、一つとは限らない。多様な方略の中から適切な方略を選択し、活用する経験を積んでいくことは重要となるであろう。 この自己調整の経験を生徒たちが日常的に積むために最適な場面として考えられるのが、学習においては日々の家庭学習と各教科等の授業の場面である。そして、それぞれの場面で自己調整の経験を積むことによって自己調整する力を相互に育成することができると考えた。この自己調整の経験を振り返ることで、生徒は無意識に行っている自己調整を自覚したり、自己調整する力の汎用性を実感したりすることができるであろう。やがて、学習にとどまらず生活の様々な場面で、生徒が自己調整する力を汎用的に発揮することが期待できる。自己調整する力のような非認知能力を育成することは、生徒が人生をより豊かに生きていくためにも重要なことだといえよう。 中学校 学びを自己調整する力 4

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