第1節 1年次の研究から見えてきたこと (1) 1年次の研究の概要 児童・生徒が、自らの学習過程を客観的に捉え、うまくいかなかったところはどこか、どのようにすれば次第1章 研究主題について 図1-1 伊藤崇達「『自ら学ぶ力』を育てる方略」より 筆者が編集 には改善できるのかを振り返り、自らの学びをコントロールする力 (一部、筆者により編集) とされている(1)。 〇GIGA端末を活用して、生徒は表計算ソフトで作成した計画表(セルフマネジメントシート)に自身の学習情報(学習した時間、内容や学習方略、テストの結果など)を蓄積し、分析した。 〇GIGA端末を活用して、生徒は指導者やクラスメイトと学習方略を共有した。 〇GIGA端末を活用して、指導者が生徒の学習の進み具合をモニタリングし、アドバイスした。 「勉強が計画どおりに進まない」「上手な勉強のやり方が分からない」といった学習上の悩みを抱えている生徒が主体的に学習に向かうためにはどうすればよいのか。筆者自身が中学校現場で思い悩んでいたことが研究の動機となっている。 本研究では、自らの学習過程を客観的に捉え、適切な学習方略を選択しながら学習を改善するための振り返りを行い、主体的に学習を進めていくことができる生徒の育成を目指している。そのために必要となる資質・能力が学習を自己調整する力であり、先行研究では、 学習の自己調整は①予見の段階、②遂行コントロールの段階、③自己省察の段階の三つの段階で構成される循環的なプロセス(2)とされており、この三つの段階のそれぞれに、動機づけ、学習方略、メタ認知の三つの要素が関係している(図1-1)。詳細は1年次の論文を参照いただきたい(3)。 なお、「学習方略」とは自らの学習を効果的にするために学習者がとる方法のことをいい、単に問題集を使って勉強するや教科書を読むといった一般的にいわれる学習方法も内包しているものである。また、1年次に続き、本研究では「動機付け」を機能として捉え、先行研究に従い「動機づけ」と表記している。 1年次の研究実践では、生徒がこの三つの要素を備えることを支援するために、以下の活動を行った。 生徒は図1-2(p.2)のセルフマネジメントシート(以下SMS)に学習の目標を設定し、計画を立てた上で家庭学習に取り組んだ。家庭での学習はいつも計画どおりに進むわけではない。生徒は日々の学習記録をSMSに入力し、自身の学習情報を分析しながら必要に応じて学習の進め方を調整していった。 学習課題や目的に応じて適切に学習を進めていくためには、多様な学習方略を備えておいたほうがよい。しかし、多くの生徒は繰り返し書いて暗記するや、わからなかったら友だちに聞くといった、限られた学習方略しかもっていないようであった。そのため、特別活動の時間にGIGA端末を活用して、指導者やクラスメイトとお勧めの学習方略を紹介し合う活動を行った。 学習の自己調整において、他者の存在は極めて重要である。他者との関わりによって、動機づけを高めることや学習方略を新たに獲得すること、メタ認知を働かせて自身の学習状況(学習の進み具合や行っている学習方略の有効性、学習へのモチベーション)をより客観的に把握することが可能となる。特にSMSに蓄積した学習情報を活用して自身の学習状況を分析する際に、他者からの意見は欠かせない。なぜなら中学校 学びを自己調整する力 1 9
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