615_R4「自己調整」最終稿【久保田】
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て、認知的方略を汎用的に活用することができていると回答している。ここでいう汎用的な活用とは、適切な認知的方略を場面や学習課題、目的に応じて適切に用いることであり、生徒たちは一定程度、学習の見通しを立てた上で認知的方略を自己選択することができていると考えられる。その際、メタ認知を働かせることや動機づけを高めることが必要であり、自己調整する力を発揮しているはずである。また、この自己調整する力を学習の場面だけにとどまらず、日々の生活や将来においても発揮していくことを本研究では目指している。この点について、生徒の声を直接聞いてみたいという思いもあり、生徒に聞き取りを行うことにした。以下はその内容である。 筆者:見通しを立てて、実行してみて振り返る。そして、上手くいかなかったら改善するということは普段 アンケートと聞き取りからは、生徒が自己調整する力の汎用性を実感し、既に学習以外の様々な場面で発揮しているといった見取りを得ることはできなかった。正直に述べると「こういうことが自己調整なのか」「この力はいろいろなところで使えそう」と、実践により、学習の場面を通して自己調整する力を理解し、汎用的に発揮するためのスタートラインに立っているのが現状だといえよう。しかし、成果はある。それは、今回の研究実践によって、生徒たちがこれまでの生活の中で無自覚であった自己調整を自覚し、自己調整のサイクルを理解できたことである。生徒たちは、見通しを立て実行してみて上手くいかなかったら改善するという自己調整のサイクルを意識しながら今後の学習を進めることができるであろうし、学習の場面だけではなく、日頃の生活の中でも自己調整する力を汎用的に発揮することが期待できる。将来、未知の課題や想定外の大きな課題に直面した時に生徒が主体的に課題の解決に向かっていくためにも、義務教育期間のうちから自覚的に自己調整する力を発揮し課題を解決していくことは貴重な経験となるであろう。 第2節 指導者の側面から (1)個に応じた学習指導の実現 学習の理解や進度、到達具合が異なる中で、全ての生徒に対して個々に適切な支援を行うことは容易なことではない。本実践では指導者が、家庭学習においてはSMSを生徒との間で共有することを行い、各教科等の授業においては生徒が記述した認知的方略の振り返りを見取ることを行うことで、より一層の個に応じた指導の充実を図った。指導により、生徒の学習を自己調整する力を伸長させ、学びの質を高めることができたのか、生徒が主体的に学習を進めていくことができたのか、研究協力員それぞれから聞き取った内容を以下に示す。 協力員A:SMSを活用したことで、自分が学習した時間や使っている方略が瞬時にグラフ化され、生徒が自分のことを客観的に把握できるようになったのがよかったです。僕ら教師にとっても、生徒の家庭での学習の様子をちゃんと把握した上で「頑張ってるな」と声を掛けることや「暗記ばかりやってるよ」と今までとは違って、的確にアドバイスをすることができるようになったと思います。ただ、それは生徒がSMSに学習の計画や学習した記録をしっかりと入力し、活用することが前提なんですけどね……。 から行っていますか? 生徒Q:勉強ではいままで意識したことはなかった。でも、野球の練習をする時に言われてみればそういうことはある。 筆者:今回、実践に協力してくれて、みんなは自己調整する力を使えていると思う? 生徒R:自分で考えて、どうしたら上手くいくのかどうしたら失敗するのかを、自分で経験して考えることが大切だと思うようになった。勉強でもいろいろな方法を試してみるというのは大切だと思います。 生徒S:自分たちのいまの一番の目標は志望校に合格することで、自分が勉強のどこが得意で苦手なのかを客観的に見て、苦手なこともやっていく必要がある。そうすることで同じ失敗を繰り返すことがなくなると思います。 学び方を生徒が自分で選択するので、生徒の学習に対する姿勢が前向きになったように感じています。授業で活動する姿も生き生きしていて、やりがいを感じているようだった。課題を解決するまでの道のりを自分で考えたり、解決方法を見つけ出したりしながら学習していくことになるので、生徒の思考、判断、表現する力を育成することにも効果があったと思います。 中学校 学びを自己調整する力 21 29

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