615_R4「自己調整」最終稿【久保田】
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生徒たちは、認知的方略の特徴や効果を実感し、学習課題や目的に応じて汎用的に活用したことが、学習の効率を上げたこと、学習へのやる気を高めたこと、学びを深められたこと、テストで高得点が取れたことにつながったと話してくれた。生徒は指導者から教示された認知的方略を、学習課題を解決するための道具として自覚し活用しているといえよう。特に生徒Oの発言は、実践によって認知的方略を汎用的に活用することができるようになり、それによって学習の成果が上がったことを示唆している。 生徒たちが認知的方略を汎用的に活用していることは、実践の初期段階に比べてC:リソース活用方略の活用が家庭学習の場面で増加していることからもわかる(図3-7 p.11)。この点について、実践終期(11月)における家庭学習と授業との間での認知的方略の活用傾向の違いを表した図4-2(n=117 家庭学習:回答数=345 授業:回答数=348 どちらも生徒一人あたり三つまで選択可)を確認したい。家庭学習の場面に比べて授業の場面で生徒たちはC:リソース活用方略を活用する機会が多かった。そのため、生徒はC:リソース活用方略の有効性を実感し、活用する経験を授業の場面で積むことができ、家庭学習の場面へと汎用的に活用するようになったと考えられる。この認知的方略の汎用的な活用は無自覚なものではない。「あの時のあの方略がここでも使えそう」と、生徒たちは図を使うこともやっていたけど、自分で選んで使うことはできていなかった。 勉強の仕方を知って使っていくうちに使えるようになっていた。だから、効率よく勉強できるようになったと思う。 生徒N:自分で選べた方がやる気が起きる。一人で考えたいときは一人で。友だちと協力する時も、人によって理解が違うから、決められたペアでやるよりもいい。 生徒O:いろいろな学習方法(方略)を使えるようになって、人に説明したり図やグラフにして考えてみたり、いままで勉強した内容から考えてみたりしたことで、学んだことが深まった気がする。テストでもよい点数が今回、取れた。 第4章 研究の成果と課題 図4-1 認知的方略を自己選択したことと成果の実感 図4-2 家庭学習と授業との認知的方略の活用傾向の比較 第1節 生徒の側面から (1)学習の質の高まり 生徒が自覚的に学習を自己調整し、自己調整した経験を次の学習に生かすようになることを本研究では学習の質の高まりと捉えている。第3章で紹介した生徒の振り返りから、この様子を見取ることができたが、より客観的に検証するために生徒に対して実践の事後アンケートと聞き取りを行った。 図4-1(n=117)は認知的方略の自己選択と学習の成果の実感を生徒に問うたアンケートの結果である。6割以上の生徒が学習に効果的であったと回答しているが、その理由を生徒に尋ねてみたところ次の発言があった。 生徒M:まず、六つの学習の仕方をそもそも知らなかった。だから、家で勉強する時は暗記ばかりをしていた。中学校 学びを自己調整する力 19 27

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