生徒E:リソース活用方略 理由 電離の様子を言葉で説明するにあたって、もっとよく理解したいと思ったから。 効果 図に書いて考えることで、電離の様子を見える化することができ、言葉で説明しやすくなった。 生徒F:関連づけ方略 理由 化学は記号とかはよくわからないけど、生活にもよく関係するからわかりやすい。 効果 身近なことと関連させたら覚えやすいしわかりやすい。 生徒G:援助要請方略 理由 書くだけじゃなくて、話して探究していく方が私は頭に残りやすいからです。 効果 実際に頭に良く残ったし、なにより楽しいなと思いました。 生徒H:意味理解方略 理由 意味を理解しながら取り組むことで、問題が変わっても応用になっても対応していけるから。 効果 今回でいうと違う物質で実験をしても、前の授業にやったことを生かして考えることができた。 いる様子であった。限られた回数の実践であったが、生徒は「この方略を使えば解けそうだ」と見通しをもち、メタ認知を働かせて自身を一段高いところから捉えて学習を自己調整することができていた。また、自分が考える最適な認知的方略を最適なタイミングで活用することが、生徒の学習への動機づけに作用しており、授業時間の最後まで多くの生徒が粘り強く学習課題に取り組むことができていた。生徒は、認知的方略の自己選択と振り返りの活動を繰り返すことで、はっきりと自覚して学習を自己調整できるようになってきていると考えられる。 (2) B校(中学3年生) 理科での実践 実践を進めることで得た成果と課題は、協力校の間で共有し互いの実践に生かしている。その一方で、あえて実践の進め方を変えているところもある。筆者は、生徒が認知的方略を自己選択する機会は研究授業の時のような年に数回の授業や、多大な時間と労力をかけて準備することが必要な特別な授業でなくても設定できると考えている。そのため、B校での実践は、生徒が認知的方略を自己選択する機会を単元の最終時間に設定していない。単元の中盤であり、日頃の授業で生徒に投げかける問いから生み出そうとしている。 <10月中旬 単元:塩化銅水溶液の電気分解> 授業の目標は、塩化銅水溶液の電気分解を行い、その化学変化の仕組みを説明することである。実験から得た情報をもとにして、目標を達成していくためにどのような認知的方略を活用していくかが、生徒が自己調整する機会となる。 理科の授業としてはイオンや原子モデルを利用して説明することが一般的だそうである(筆者の担当教科は社会科)。しかし、電気分解によって起きた化学変化を理解するために、実験の様子を図で表現する生徒やGIGA端末を活用して語句の意味を検索する生徒、既習内容から考える生徒、友だちと協力する生徒など、生徒は個々に自己調整をしながら授業の目標の達成に向かっていた。 以下は授業の振り返りである。学習内容からC:リソース活用方略を選択する生徒が多いと考えていたが、生徒の振り返りを見ると、意外にも他の認知的方略を活用している生徒がいることがわかった。 認知的方略を選択した理由については、動機づけの高まりによるもの、普段の生活との結び付きによるもの、学習における自身の特性によるもの、これまでの経験によるものなど多岐に渡る。また、認知的方略を活用した効果についての記述からは、自己選択した認知的方略を活用することが、自身の学習の理解図3-15 塩化銅水溶液の電気分解の実験の様子を図に して、学習内容を理解する生徒 中学校 学びを自己調整する力 17 25
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