用の第一歩だといえる。今後の授業で異なる学習課題に向き合った際にも、生徒が自己調整する力を発揮し、認知的方略を汎用的に活用することを期待したい。 一方で、指導者にとってはA:援助要請方略といった授業中に観察しやすい認知的方略だけではなく、生徒の机上や頭の中で行われている自己調整の意思的な側面や、選択した認知的方略の有効性を生徒が実感している様子を容易に見取ることが可能になる。 なお、今回の実践での生徒の振り返りには、「なぜその方略を選択したのか」といった認知的方略を選択した理由についての記述が少なかった。この点は学習を自己調整する経験を積むことで解消されていくと考えられるが、次回の実践に向けて生徒がより記述しやすいように振り返りシートを改善していくことにした。 <9月下旬 単元:二次関数> 今回も単元最後の授業に、認知的方略の選択という自己調整の機会を設定することとした。基本的な授業の流れは前回と同様であるので割愛するが、前回の反省を踏まえて振り返りシートに以下の修正を加えた。 〇感想といった漠然とした表記(伝え方)ではなく、認知的方略を活用した「理由(意図)」「効果」と生徒にこれにより、振り返りに記述する内容が明確になった。図3-12は修正した記入欄に生徒が記述した振り返りである。理由についての記述を確認する。 もはっきりと明示し、記入欄を分けた。 1つ1つの文章の意味や、聞かれていることを 確認して、理解しながら解いていくことで整理できるので、やりやすかったから。 生徒は学習課題の内容を把握し、学習を自己調整したこれまでの経験や有効性の実感から、見通しを立てた上でE:意味理解方略を選択していることがわかる。続いて、E:意味理解方略を活用した効果についての記述を確認する。 分からないところが、そのまま分からないままにならないし、理解しやすい。 生徒は選択した認知的方略の有効性を記述しており、上段の理由と合わせて読むと、おそらく日頃から意味理解を大切にして学習に取り組んでいるのだと考えられる。多様な学習観をもつことで、特定の認知的方略の活用にこだわるのではなく、適切な認知的方略を自己選択し活用することが可能になる。振り返りからは、自己調整の経験を積むことで、認知的方略を汎用的に活用し、学習の質を高めながら学んでいる生徒の姿を見取ることができた。生徒が今後の学習において、より主体的に学習に取り組むことが期待できる。 図3-12 生徒が記述した振り返り(二次関数) 22 中学校 学びを自己調整する力 14
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