生徒はC:リソース活用方略を活用したことが学習課題の解決につながったと、選択した認知的方略の有効性を実感している。活用した認知的方略の有効性を振り返りに記述することは、認知的方略の自覚的な活「どの学習課題から取り組んでもよい」「どんな方略を活用してもよい」と、学習課題の解決に向けたプロセスやそこで活用する認知的方略を自己調整する機会を与えられた生徒は、最初のうちは戸惑いを見せていた。しかし、5分も立たないうちに教室内は、友だちと協力して考える生徒、一人で考える生徒、タブレットで語句の意味を検索する生徒、グラフや表を活用して考える生徒、既習内容と関連付けて考える生徒といったように、個々に認知的方略を選択し学習課題の解決に向かっていくようになっていった(図3-9)。 ここで重要なのは単なる自分の好みで認知的方略を選択することではない。「この方略ならできそうだ」と生徒が見通しを立てて、学習課題の解決に最適だと思う認知的方略を自分で選択することである。そして、これまでのように指導者が「グラフに置き換えて考えましょう」「次はペアになりましょう」といちいち指示を出すことは行わなかった。生徒たちは自分が選択した認知的方略に従って学習に取り組んでいた。普段であれば、指導者が設定した一人学びの時間では「難しい」「わからない」と机に伏せてしまう生徒も、自分が必要だと思うタイミングで友だちと一緒に学習課題に取り組むことができ、動機づけを保った状態で最後まで学習することができていた。 指導者の役割についても記述しておきたい。指導者は授業の目標と認知的方略だけを生徒に伝えて、「あとは自分たちでやりなさい」と学習活動を生徒に任せたままにしているわけではない。学習活動の主体は生徒であるが、そもそもの課題設定や問いの工夫といった教材研究に始まり、授業の中での生徒への個別支援(図3-10)、指導者によって吟味された思考を揺さぶるための追発問など、生徒の学習活動をファシリテートする周到な準備と的確な指示が、生徒の学びを確かなものにするためには必要となる。指導者の役割は依然として重要だといえる。また、「活動あって学びなし」といった形だけの学習とならないよう、認知的方略の選択という自己調整により生徒が学習課題を解決することや学びを深めることができたのかを、振り返りによって指導者が確認する必要がある。 図3-11は生徒が記述した授業の振り返りである。生徒はC:リソース活用方略を活用した感想を次のように記述している。 数をあてはめるだけでは分からなかったけど、表に してあらわすと規則もわかるようになりました。 図3-9 個々に認知的方略を選択している生徒 図3-10 支援が必要な生徒に個別指導する指導者 図3-11 生徒が記述した振り返り(二次方程式) 中学校 学びを自己調整する力 13 21
元のページ ../index.html#15