615_R4「自己調整」最終稿【久保田】
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図3-8 学習課題の一例 表を活用して考えることの有効性を生徒に実感させたい 中学校 学びを自己調整する力 12 20 庭学習でも使えそう」と、汎用的な活用が促されたのではないだろうか。この点については第4章で述べることとする。また、E:意味理解方略を生徒が活用することも増えており、家庭学習の場面で認知的方略の活用が少しずつ多様になっていることがわかる。図や表を活用することで学習の理解が深まった経験や暗記一択の学習には限界があることをSMS内の振り返りに記述している生徒もいた。生徒は自己調整の経験を積みながら、学習課題や目的に応じて適切な認知的方略を自己選択して学習を進めていたと考えられ、実践により家庭学習の質を高めることができたといえそうである。 指導者からのアドバイスが、生徒が学習方略を獲得することやメタ認知を働かせること、学習の動機づけを高めることに一定の成果をもたらしていたことにも触れておきたい。生徒からも、指導者のアドバイスによって自分の学習の問題点を理解することができたという声が挙がっていた。生徒は自らの学習を改善し、振り返りながら家庭での学習を進めることができていた。今回の自己省察の後、再び予見の段階へと循環し今後の学習の計画を生徒は練っていくであろう。研究実践としてはここまでで一区切りとなるが、引き続き生徒が自己調整する力を発揮し、学習の質を高めながら主体的に家庭での学習を進めていくことを期待している。 第3節 授業での実践 授業での実践は各研究協力員の担当教科である数学科と理科で行った。六つの認知的方略はそもそも汎用性のあるものである。そのため、場面や教科によって認知的方略の数を増減したり内容を変えたりすることはせず、家庭学習だけではなくそれぞれの教科の授業実践にもそのまま活用している。 本研究実践では「どのように解くのか」「どのように考えるのか」と、生徒が学習の見通しを立て、自らの判断で認知的方略を選択したり修正したりしていくことを通して、学習を自己調整する力を高めていく。そのため、授業実践の場面においても、特定の認知的方略の活用を指導者が指示することはしない。また、自己選択した認知的方略を振り返ることで、生徒が自己調整の経験を生かして学習の質を高めていくことを目指している。 本節については各研究協力校をA、Bとして、実践の様子と実践のたびに得られた考察をそれぞれ時系列に沿って述べていくこととする。 (1) A校(中学3年生) 数学科での実践 <7月中旬 単元:二次方程式> 認知的方略の選択という自己調整の機会は、これまでの授業で身に付けた知識や技能を活用することができるように、単元最後の授業に設定することとした。そして、課題プリントには計算して解答する学習課題だけではなく、表やグラフを活用したり、分類しまとまりをつくって整理したりするといった、複数の認知的方略を選択することができる学習課題もいくつか用意した。そして、指導者から以下の指示が生徒に出された。 いまから30分間やってもらいますが、課題を解くための方略は自分たちで決めてください。例えば、何も見ずに自力でやろうとか、教科書、これまでのワークシートを綴じたファイル、タブレットとかを使って調べてやろうでもいいし、一人では自信がないので誰かとやろうとか、図やグラフに置き換えて考えてみようとか、どんな方略でも良いです。どういう方略が一番、自分の理解につながるか、課題の解決につながるかを考えて取り組んでください。

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