図3-7 実践初期(7月)と終期(11月)での家庭学習に おける認知的方略の活用傾向を比較 な指導者による支援を受けながら、生徒は自らの学習の進め方を振り返り、日常的に自己調整をしながら学習を進めていった。 SMSの活用と指導者との共有は、生徒の学習を自己調整する力を育成することに一定の成果をもたらしたといえる。しかし、SMSを日常的に活用することが難しい生徒が多くいたことも述べておきたい。その理由を二つ挙げる。一つ目は生徒の定期テストについての捉えである。定期テストは極めて重要な節目であり、学習評価への影響が大きいものだと生徒は考えている。そのため「定期テストで点が取れればよい」「定期テストに間に合えばよい」と、テスト期間とそれ以外の普段との間で、学習に向かう動機づけに大きな差が生じていると考えられる。定期テストの目的が、テストを通して学力の定着を図ることであるならば、一夜漬けやテスト前の2週間だけ頑張るといった、家庭での学習の進め方と生徒の認識を変えていく必要がある。 二つ目は、GIGA端末の画面の小ささである。今年版SMSは「実技教科の学習をした記録も残したい」という生徒からの声もあり、一つにまとめていた実技教科の入力枠を音楽、美術、保健体育、技術家庭のそれぞれに設けることにした。また、今年の実践の軸は認知的方略の自己選択であるため、生徒が選択した認知的方略をプルダウンして記録するための枠も設けた。しかし、これにより1か月分のシートが昨年度のシートよりも大きくなってしまい、GIGA端末の小さな画面内で入力するには、その都度シートの表示倍率を操作することが必要となってしまった。この点について、生徒のGIGA端末や表計算ソフトの操作スキルが昨年度に比べて格段に向上していることから、そこまで懸念をしていなかったが、筆者が想定していた以上に、入力することを億劫だと生徒に感じさせてしまう原因になったと言わねばならない。 (3)再び自己省察の段階へ 11月下旬に行われた定期テストの後、生徒はSMSに記録した学習履歴をもとにして、これまで進めてきた家庭学習の自己省察を行った。以下は認知的方略に関する生徒の分析である。 〇いままではただ暗記するだけだったけど、図や表になおしたり意味を理解したりして覚えた。 〇ノートにまとめたり、友だちに聞いたり、自分で説明したりと色々な方法で勉強したから、思っていたより 一方で、C:リソース活用方略の活用傾向が倍近く増えていることは注目に値する。なぜ、家庭学習において活用することが大幅に増えたのか。その理由は同時並行で進めている各教科等の授業での実践が関係していると考えられる。C:リソース活用方略の有効性を生徒が実感したことで「家も点数がよかった。 〇漢字だけじゃなく、物語など苦手なところを何回も読んだりして、内容を頭に入れるようにした。 〇友だちや先生と勉強した。先生から受けたアドバイスがとてもよかったです。 実践の初期(7月)と終期(11月)とで家庭学習での認知的方略の活用傾向を比較した図3-7(終期 n=117 回答数=345 生徒一人あたり三つまで選択可))からは、依然としてB:リハーサル・記憶方略の活用が多いことがわかる。全体的にみても、認知的方略の活用傾向にそこまで大きな変容は見られない。しかし、だからといって生徒たちが学習を自己調整することができず、学習課題や目的に応じて認知的方略を汎用的に活用できなかったと結論付けるわけではない。自己調整の結果、記憶や暗記、意味理解が家庭学習においては有効な学習方略であると、生徒が判断して活用していたともいえよう。自らが取り組んでいる学習課題や指導者から課されている学習課題の内容に依るところも大きい。そのため、認知的方略の活用傾向に大きな変容が見られなかった可能性がある。 中学校 学びを自己調整する力 11 19
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