図3-6 生徒のSMSに貼り付けた指導者 からの学習のアドバイス アドバイス 18 <今月の学び方の振り返り> 〇前回のテストの時よりも時間をかけて勉強することができた。英語はわからない時こそ友だちに説明して身 に付けていくこと。社会や理科は何度も問題を解いて今まで勉強していたが、テスト前の短期間でたくさん 問題を解くだけでは難しいと感じました。その日の授業を大切に、集中して授業に取り組んでいきたいです。 生徒は他者に説明することで学習の理解を深めることの有効性や短期間に問題を解くだけの学習の不十分さといった前回のテストから得ることができた学習方略についての教訓を記述している。この教訓をもとに日々の学習を進めていたことがわかる。この生徒の記述に対する指導者からのアドバイスが以下である。 向きでいい方略だと思います。他教科でも意識して続けていきましょう。 からもB:リハーサル・記憶方略に次いで、E:意味理解方略の活用が多いことがわかる。実践によって認知的方略それぞれの有効性を生徒が実感することで「ただ暗記すればよい」のではなく「意味理解を大切にする」といったように、生徒たちの学習観(どのような学び方を大切に思っているか)が変容していくことを期待したい。学習観が変容していくことで、生徒は認知的方略を汎用的に活用しながら学習を進めていくことができるであろう。 (2) 予見、遂行の段階へ (1)の自己省察を経て、生徒たちは今後の学習に向けてのプランニングを行う予見の段階、そして、そのプランニングに基づいて学習を進めていく遂行の段階へと進んでいった。この段階では、日々の学習の計画や学習した記録を生徒はSMSに入力し、学習履歴として蓄積していくことになる。運用に関しては昨年度とは違い、提出日は設けないことにした。その理由は、指導者との間で共有を設定したことにより、指導者がいつでもどこでも生徒のSMSをモニタリングし、学習のアドバイスを行うことができるからである。また、期限を設けることが生徒に負担感を与えることや、提出に間に合わせるために入力するといった、入力することが目的となることを避けるためである。 図3-6は生徒のSMSに指導者が貼り付けた学習のアドバイスである。生徒の英語の学習時間が計画していた時間(5.5h)よりも少ない時間(1.5h)になっていることから、指導者は学習の遅れを心配し「英語(の学習時間)は予定よりもかなり少なめなので、次週で調整しましょう!」とアドバイスを送っている。このように、指導者は生徒の家庭学習の様子をモニタリングし、必要な支援を適宜行っていった。もちろん、SMSにアドバイスを貼り付けるだけではなく、休み時間や放課後の時間を利用して生徒に口頭で指導することも行った。 また、SMSには1か月ごとに家庭学習の進め方の振り返りを生徒が入力し、それに対するアドバイスを指導者が入力する箇所がある。以下はその振り返りの内容である。 <先生からのアドバイス> 〇バレーが一区切りして、勉強に使える時間が増えたようですね。「わからない時こそ説明」という発想は前学校での様子をよくわかっている指導者からのアドバイスは、生徒にとって何よりの励ましとなるであろう。自分が大切だと思っている学習方略を指導者から認められたことで、生徒はまた一つ新たな学習観を獲得し、学習方略を場面や学習課題、目的に応じて汎用的に活用していくことが考えられる。指導者からも、学習方略を他教科でも活用するようにアドバイスを送っている。このよう中学校 学びを自己調整する力 10
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