(1) これまで進めてきた学習の自己省察 9月に京都市内の各中学校で定期テストが行われた。協力校では、このテストまでの学習の記録をSMSに残していくように生徒に指導していた。 〇教科書をしっかり読んで内容を理解することが大切だと感じた。 〇単語をかくしながらたくさん書いて覚えた。もっと練習問題をする。もっとワークを何回もする。 〇ただ単に書くだけじゃなく、内容を理解してしっかり完ぺきに覚えておかなければならない。 〇問題集を自分でやってちゃんと理解する。 図3-4 分析用シートと生徒が入力した分析と改善策 図3-5 実践初期(7月)の家庭学習での認知的方略の活用傾向 SMSには1か月ごとに家庭学習の進め方の振り返りを生徒が入力する箇所も設けている。家庭学習の場面においても、自己選択した認知的方略を生徒が振り返ることで、より適切な認知的方略を選択しながら学習していくことを目指している。 SMSの指導者との共有は学習支援ソフトを利用して行った。共有することで指導者が時間や場所を問わず生徒のSMSをモニタリングすることや、SMSに学習のアドバイスを直接入力したり貼り付けたりすることができる。生徒は指導者とSMSを共有することについて特に抵抗を感じておらず、昨年度は指導者からの承認や励ましといったコメントが新たな学習の気付きを生徒に与え、生徒がメタ認知を働かせることや学習に向かう動機づけを高めることにつながっていた。生徒は指導者からのアドバイスを学習の自己調整に上手く活用していた。本年度も同様の効果が期待できると考えている。 第2節 家庭学習での実践 そこで、SMSに蓄積してきた学習履歴や今回のテストの結果(各教科の素点)をもとにこれまで進めてきた学習の振り返りを行った。振り返りを行う際には、学習支援ソフトを活用して教科ごとの分析用シート(図3-4)を生徒に配信した。シートには、「学習時間」「学習内容」「学習方略」「他教科」「過去の自分」「テスト結果」といった視点が明示されており、生徒はこれらの視点をもとに比較や推移、関連付けといった分析と、今後の学習に向けた改善策を考えた。昨年度の実践では学習時間に関わる分析が多い傾向があったが、今年度は学習内容や学習方略についての分析が増えたと思われる。そのため、自ずと改善策も学習方略に関するものが多くなった。以下は分析後に生徒が記述した学習の改善策である。 六つの認知的方略の中のB:リハーサル・記憶方略にあたる記述が多く、家庭での学習において、生徒は学習内容を覚えるために繰り返し暗唱したり反復して書いたりすることを有効な学習方略だと考えていることがわかる。 実践の初期に行ったアンケート(図3-5「7月上旬に実施 n=133 回答数=328 生徒一人あたり三つまで選択可」)も同様の結果を示している。しかし、語句を覚えるために、ただ繰り返し書くのではなく語句の意味を理解した上で覚えることが重要だと、暗記の質について考察する記述が昨年度に比べて増えていたことに驚いた。アンケート結果中学校 学びを自己調整する力 9 17
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