4 例えば算数科において, ICTを使ってアンケート調査・集計を行い,その情報をもとに問題解決する活動の中で,度数分布表やヒストグラムの特徴,代表値の意味を学習する。情報活用能力としては,編集と記録,情報の収集,情報の整理・分析の力に当たる。これらの学習を終えた子どもたちが,総合的な学習の時間においてアンケート調査を行った際,集計したデータについて形式を変えて整理し様々な角度から分析したり,どのような表またはグラフにすれば自分たちの考えがより伝わるのかを考えたりしていた。 つまり,各授業において教科等の資質・能力を育むことと情報活用能力を育むことは別個のものではなく, ・教科のねらいを達成する過程で情報活用能力が育成される ・情報活用能力を発揮することで教科のねらいが達成される という関係にあるということである。情報活用能力は,正に学習の基盤となる資質・能力として示されているのである。 また教育の情報化は,以下に示されたように個別最適な学びと協働的な学びの充実につながることが期待されている(13)。 新学習指導要領を着実に実施するに当たっては, GIGA スクール構想により整備されるICT環境を最大限活用し,「個別最適な学び」と「協働的な学び」を充実していくことが重要である。 例えば,何らかの事情により登校することができない子どもでも,テレビ会議機能を使って授業に参加することができる。発達障害等の困りを抱えた子どもへの支援も,必要なアプリケーションが備わったICTが充実することでこれまで以上に丁寧に行うことができるであろう。 あるいは,デジタルドリルの履歴や学習支援ソフトに蓄積した子どものノート等の学習履歴を指導者が一元的に把握することで,きめ細かくかつ効率的に個々の学習状況を把握・分析することができる。それらの情報を学年の教員間,養護教諭等で共有することにより即時的かつ多面的に児童理解が行え,これまで以上にきめ細かい支援ができる指導の個別化につながると考えられている。 また学習履歴は子どもも把握することができる。自身の学習状況を分析したりこれまでの学びを振り返ったりしながら,今後の学習の見通しを立てたり,学び直しや発展的な学習を行いやすくなったりすると考えられている。ICTを使うことで,子ども自身が学習を最適なものに調整できる学習の個性化につながると考えられる。 協働的な学びの充実へのICT活用はイメージしやすいであろう。これまでアナログで行ってきたグループでの新聞作りやポスター作りは,内容を吟味すること以上に,資料を印刷したり書き直しが発生した際に作り直したりすることなどに労力を使うことも少なくなかった。ICTを使うことでこれらの労力は減少し,より内容構成や資料の選択,表現方法の吟味など教科等のねらいに即した活動に時間をかけることができるであろう。テレビ会議も手軽に行うことができるので,これまでより簡単に遠隔地の専門家や他の学校・地域・海外との交流も可能になり,協働的な学びの可能性は格段に広がる。 これからの学校教育を担う教員は,ICT活用や情報活用能力と教科等で育む資質・能力を切り離して考えてはならない。ICTを最大限活用することで学習の基盤となる資質・能力である情報活用能力が育まれたり「個別最適な学び」や「協働的な学び」が充実したりし,結果としてよりよく教科等で育む資質・能力が育成されるというイメージに切り替えることが重要である。 ③の校務の情報化については,二つのねらいがある。一つ目は,児童生徒の情報を素早く共有したり,分析したりすることによってより適切な指導をすることである。例えば,学習履歴が共有されれば,教科担任制において他教科との関連が図りやすくなったり,または児童生徒への総合的な理解が図りやすくなったりする。 二つ目は効率化である。一つ目に拳げたような事例は,これまでも時間をかければできたことである。しかし,それらがより短時間でできるようになることで,教職員が児童生徒の指導により多くの時間を割くことができたり,素早い対応が可能になったりするのである。 教育研究の方向性 3
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