※( )は筆者による 踏まえ,より一層個に応じた指導を重視する必要があるとされたのである(6)。 そこで改めて,個に応じた指導とは何かが二つの観点から整理された(7)。 一つ目が「指導の個別化」である。教師が支援の必要な子どもに,より重点的な指導を行うことなどで効果的な指導を実現することや,子ども一人一人の特性や学習進度,学習到達度等に応じ,指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどとされている。 二つ目が「学習の個性化」である。例えば,幼児期からの様々な場を通じての体験活動から得た子どもの興味・関心,キャリア形成の方向性等に応じて,探究において課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現を行う等が考えられる。教師が子ども一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供することで,子ども自身が,学習が最適となるよう調整することとされている。 この個に応じた指導を学習者視点から整理した概念が「個別最適な学び」であり,今後,子どもが孤立した学びに陥らないように留意しながら「個別最適な学び」を進められるよう,指導者による工夫が求められている。 これからの社会には,あらゆる他者を価値のある存在として尊重し,様々な社会的な変化を乗り越え,持続可能な社会の創り手となることができる資質・能力が必要とされている(8)。そこで重要になるのが,協働的な学びである。これまでの日本型学校教育では,協働的な学びによって,子ども一人一人の良い点や可能性が生かされ,異なる考え方が組み合わさり,よりよい学びが生み出されることを重視してきた。そのような体験を通して,他者を尊重する姿勢が育まれ,自分の活動で何かを変えたり社会をよりよくしたりできるという実感をもつことができるのである。 実際の授業づくりにおいては,個別最適な学びと協働的な学びとは,組み合わさって実現されていくであろう。例えば,個々の子どもの個別最適な学びの成果が協働的な学びに生かされ,さらにその成果が個別最適な学びに還元されるような場合である。個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実が,求められているといえよう。そしてその実現に向けては,ICTの活用をはじめとする教育の情報化の推進が不可欠である。 (3)教育の情報化の推進 情報活用能力も含めたSociety5.0時代に求められる資質・能力の育成,個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実,この二つの方向性に加え,昨今重要視されている働き方改革に関する課題を乗り越えるために教育の情報化の推進が不可欠であるとされ(9),令和元年6月に「学校教育の情報化の推進に関する法律」が,さらに具体的な進め方として,同年12月に『教育の情報化に関する手引き』が示される。それによると教育の情報化は,以下の三つの側面を通して教育の向上を図るために行われる(10)。 ①情報教育:子供たちの情報活用能力の育成 ②教科指導におけるICT活用:ICTを効果的に活用したわかりやすく深まる授業の実現等 ③校務の情報化:教職員がICTを活用した情報共有により,きめ細やかな指導を行うことや校務の負 ①の情報教育で育成する情報活用能力とは,(1)で紹介した就職活動や無人バスの例に現れるようなICT操作スキルや情報の収集,整理・分析などに関わる力,そして情報モラルである。 情報活用能力については,学習指導要領において学習の基盤となる資質・能力として位置付けられており,その育成のために教育課程の編成を図ることの必要性が示されている(11)。特定の教科や単元のみでその育成を図るのではなく,学校生活の様々な場面で情報活用能力の育成を目指した実践を行うことが求められているのである。 つまり各教科等の授業において情報活用能力の育成を目指すのであるが,留意しなければならない点は児童生徒の情報活用と教科のねらいとの整合性である。それについては以下のように示されている(12)。 担軽減等 これ(情報活用能力)を確実に育んでいくためには,各教科等の特質に応じて適切な学習場面で育成を図ることが重要であるとともに,そうして育まれた情報活用能力を発揮させることにより, 各教科等における主体的・対話的で深い学びへとつながっていくことが一層期待されるものである。 教育研究の方向性 2 3
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