614 R3最終稿【木村】
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図1-5 GIGA端末導入期の視覚支援の例 136 ても,トラブル対応に自信がないという声をよく耳にする。 こういった指導者へのストレスが端末の活用を遠ざけてしまうと,このストレスは2年生,3年生へと順繰りにもち越されてしまうことになり,GIGA端末活用によって培われる児童の資質・能力育成の機会は減少していくのである。こうならないためにも,1年生のGIGA端末導入期は学校として支援していく体制が不可欠である。GIGA端末を使う時間はICTが得意な教員や支援員を配置できるようにあらかじめ調整し,できるならば個別対応ができるように複数の教員を配置して臨みたい。これだけで指導者のストレスは大きく減少する。 ストレスを抱えるのは指導者だけではない。児童は,GIGA端末を使ってみたいと思っているのと同時に,ローマ字や漢字など理解できない言葉が表示されている端末に不安も感じている。例えば,指導者が「戻る,を押して前のページに戻ってね」と指示し,児童がその意味を理解したとしても,「戻る」のボタンがどこにあるのかを判断することは難しいのである。GIGA端末を大切に使おうと言われている児童たちは,自分の端末を大切に使いたいがゆえに間違えたボタンを押して壊してはならないと思い,「もどるがどれかわかりません」と手を挙げることになる。すると指導者としては個別に指導することになり余計に時間がかかる,という姿を何度か見てきた。このような場面では,これまでも低学年で大切にされてきた視覚支援が役に立つであろう。 例えば,指導者がよく使うボタンをカードに書いて図1-5のように視覚的に示すことで,児童は記号として認識してどのボタンを押せばよいか判断しやすくなる。慣れてくれば児童同士が教え合う姿も見られるようになるのだが,こういったカードは操作手順や活動手順を示すことにも使えるため,指示を聞き洩らした児童への支援にもなり有効であった。 ②情報モラルと愛着の両立 同時に,扱い方や情報モラルの指導も必要となる。例えば,ログインに際してはログインIDとパスワードが必要となるが,これは原則他人には教えないものである。教えてはならないということと併せて,その理由も学べることが理想だが,それには適切な教材を用いた系統的な学習が不可欠であり,1年生が初めてログイン練習する際に同時に指導することは難しいであろう。情報モラルとして別の1時間の授業時間を確保し指導することが適当である。現実的には,「自分だけの秘密の番号を配ります。自分だけの大切な情報を守るための物です。鍵みたいなものです。自分だけのノートの中身を勝手に見られたら困りますよね。本当は先生も知ってたらダメだけれど,みんなが忘れたときに困るので,知っています」のような簡単な説明にとどまらざるを得ないであろう。 他にも様々なきまりの指導が必要になろうが,納得の伴わないきまりをたくさん伝え,例えば,きまりを破ったら仕様に制限をかけるなどと最初から管理する姿勢を見せることは適当であろうか。GIGA端末の目的は文房具として使えるようになることであり,お気に入りの筆箱や筆記用具と同様に子どもたちが愛着をもって使えるようになることである。GIGA端末の可能性を児童と共有し,ゆえに大切にしていきたい,そのように感じられる出会いが理想ではないだろうか。 小学校 情報教育 6

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