図1-1 SAMRモデルに豊福が加筆した図 132 びを深めることにもつながり得る。自分たちの現状をつかむためにアンケートをもとに考える活動があるが,より多くのデータを集めることで傾向をつかみやすくなる。個々人の興味・関心に基づいて調べることで,より多様な情報が集まり,立場の違いや視点の違いに気付くきっかけになる。年度をまたいだ過去の学習の履歴を参照することで新しい学びのヒントに気付いたり,成長の実感につながったりする。文章だけでなく写真や動画を用いて自分の考えを伝えることは,聞き手にとってのわかりやすさにつながる。一個人の情報のみでなくグループ内の個々人が収集・作成した資料を用いてスライドを共同編集することで,これまで以上に多くの情報に基づいたスライドをより短時間で作成できる。ICTのよさを生かした学びを構築しようとすることは,授業改善にもつながるのである。 逆を言えば,このような授業構想を立てない限りICTのよさが生きることはない。ICTが無くてもこの授業はできるのではないか,むしろ使ったことで時間がかかったのではないか,という批判を受けることになる。例えば,一人の歴史人物について,指導者が選抜した三つの資料から読み取ってわかったことを50字程度にまとめるといった授業では,ICTは生きない。資料を印刷し配る手間が省けたという効率向上の実感はあるかもしれないが,ICTを使った授業ならではの学びができた,情報活用能力の向上につながったというような本来意図された目標の達成感は得られず,ICTを用意した時間は無駄だと評価されるであろう。 どのような情報を得たいかという目的とどのような情報が手に入りやすいかという資料の特性を考え,web,教科書や資料集,歴史まんがのいずれを使おうか判断し,個々の問いに応じて子どもたちが情報収集するからこそ,情報を収集する力が養われる。収集した情報は,少量であればアナログでもいいが,複数の書籍やサイトにまたがるのであればデジタル化して運んだほうが楽であるし,共有もしやすい。子どもたちがそれぞれの問いに従って情報収集するからこそ,様々な視点によって情報が選ばれ,それらを集約することで多面的・多角的により深く分析することができる。それら多くの情報を統合した結論は当然,複数の情報を根拠としたプレゼンやレポートになるであろう。 このように情報の多さを前提として考えると, ICTを使っての情報の収集,整理・分析,まとめ・表現の過程は,1時間の授業でというより単元を通して,あるいは教科横断的なものと捉える方がより適しているかもしれない。例えば,より多くの情報をその情報源の確かさも吟味しながら収集し,その要点を理解していくことだけでも,1時間の授業の一部分,10分程度では困難だからである。 単元を通して,あるいは教科横断的に,課題の設定,情報の収集,整理・分析,まとめ・表現という過程を経ながらICTを使って問題解決する姿,これこそがGIGA端末活用の理想であるといえよう。 (2)段階的に目指す 上記のような姿を目指すには,当然だが時間がかかる。これまでICTを使って学んだことのない子どもたちに,いきなり「インターネットで複数の情報源から情報を集め,自分なりの結論を出してみよう」といったところで,適切な検索ワードを選ぶことができなかったり,情報の確かさを吟味できなかったりする。必要な情報に行きつくことすら叶わないのである。そもそも,小学校においては検索ワードを入力できないことも多い。 では,どのようなステップを踏んでいけばよいのか。ICTを授業等で活用する場合に,そのテクノロジーが授業にどのような影響を与えるかという視点で整理されたSAMRモデルが参考になる。このモデルはPuenteduraが示したモデル(2)だが,それに豊福が加筆したもの(3)が分かりやすいので図1-1に引用する。 一つ目のステップは,S(代替)である。それまでの授業において教員が行ってきた何らかの活動を,ICTに置き換える段小学校 情報教育 2
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