614 R3最終稿【木村】
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第1章 ICTを日常的に活用することで 教育の情報化の一環としてGIGAスクール構想があり,GIGA端末による情報活用能力の育成やわかりやすく深まる授業の実現,個別最適な学びと協働的な学びの両立が期待されていることは「令和3年度教育研究の方向性」(以下,「教育研究の方向性」)に述べたとおりである。では,その具体的な姿はどのようなものなのであろうか。GIGA端末を子どもたちが使い,どのように学ぶようになることが理想なのであろうか。 この理想の姿が明確でないままにGIGA端末の活用を進めると,日本において教育の情報化が進まなかったときと同様の活用がなされ,結果として教育の情報化にブレーキがかかるのではないかと懸念する。そこで本論においては理想の姿をまず共有したい。 その上で,その姿に向けて各教員,各校がどのような過程を経ることでGIGAスクール構想を推進しやすくなるのか,日常的活用,校内組織づくりの二つの視点から方策を述べていく。 第1節 日常的活用の必要性 (1)大人と同じように使う姿 まず理想とする姿を一言で言うならば,「ICTの活用が特別なことではなく当たり前のこととなり,児童生徒が現実の社会で行われているような方法で学ぶ姿」であろう。これは既に「教育研究の方向性」(p.5)で引用した箇所に記載されている内容だが,重要な内容なので今一度示す(1)。 我々大人は,生活において仕事において当たり前のようにICTを活用している。わからないことがあればすぐにスマートフォンやPCで情報を調べることができる。インターネットで手に入らない情報やより確かで専門的な情報が必要であれば,その分野に長けた人物とメール等で情報共有する。調べた情報は,文書,写真,動画等の形式で端末やクラウド上のフォルダに整理して蓄積されており,必要に応じてすぐに取り出せるようになっている。アンケート結果は,手作業ではなく表計算ソフトを用いてグラフや表の形式に整理しなおして分析する。考えたことはプレゼンテーションソフトを使ってまとめ,その際には蓄積してきた文書,写真,動画等が活用されることがある。できあがったプレゼンテーションを用いて誰かに自分の提案を表現し,相手の考えも聞き,更に整理して納得解を生み出し,協働的に問題解決していく。 1人1台の端末環境を生かし,端末を日常的に活用することでICTの活用が特別なことではなく「当たり前」のこととなるようにするとともに,ICTにより現実の社会で行われているような方法で児童生徒も学ぶなど,学校教育を現代化することが必要である。児童生徒自身がICTを「文房具」として自由な発想で活用できるよう環境を整え,授業をデザインすることが重要である。 現実の社会で行われているような方法で学ぶとは,上記のように,課題の設定から情報を収集,整理・分析,まとめ・表現するという過程において, ICTを使って学ぶことを指している。 ICTがあることで,膨大な情報の中から必要な情報にすぐアクセスすることができ,距離や時間の制限なく情報を手に入れることができる。収集した膨大な情報は,電子データだからこそ端末一つに収めることができる。手作業では頭が痛くなるような数百数千といった数の結果の集計は,ソフトが自動で行ってくれる。写真や文章を情報源からはさみで切り抜いてこなくとも,コピーして自分の発表資料に使うことができる。 ICTがなくとも,我々は情報を活用してきた。しかし,ICTは人に備わっている情報活用能力を増幅してくれる。だからこそ,我々大人はICTを活用している。このよさが生きるような学びを繰り返すことで,子どもたちがICTのよさを実感し,自分たちの夢の実現や課題の解決に向けて主体的にICTを生かすようになるであろう。同時に,様々な場面においてICTを使いながら情報活用能力を習得,発揮することは,ICT操作スキルを含めた情報活用能力の育成にもつながるはずである。 ICTのよさを生かした学び,言い換えると増幅された情報活用能力が生かされた学びは,教科等の学小学校 情報教育 1 131

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