本研究の目的は,ICTを文房具化することである。そのためには四つのステップを意識して取り組み,特に帯時間での活用や児童が主体的に活用できる場面を増やして,まずICTを日常化する必要があると考えた。さらには,そういった情報を教育情報化促進チームを中心として校内で共有することで,学校全体としてICTが文房具化していくであろうと考えたのである。 結果を二つの観点から捉える。まずは活用頻度である。日常化すること自体を目的としているので,それだけでも活用頻度は増えるはずである。続けることで指導者も児童もICTに慣れそのよさを実感することになれば,活用頻度は更に上昇するはずである。次ページの図3-1は,各学年の週平均の活用日数を事前アンケートと事後アンケートで比較したものである。 第3章 成果と課題 (10)文部科学省・国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査2018(PISA2018)のポイント」2019.12.3 (11)木原俊行,野中陽一,堀田龍也,高橋淳,豊田充崇,岸磨貴子「教師たちのICT活用に対する熱意に影響を及ぼす要因のモデル化 ―日英の教師たちの実践史の比較分析を通じて―」日本教育工学論文誌38(2) 2014 p.163 (12)櫻井みや子,和田裕一,関本英太郎「小学校教員のICT活用に対する態度と活用実態」2011.9.31 p.86 (13)福本昌之,諏訪英広,米沢崇,金川舞貴子「教員の意識調査に見る教育の情報化に関する現状と課題」川崎医療福祉学会誌Vol.24 No.1 2014 p.43 150 いて実践交流をする意図がメンバーに共有されておらず,意欲にもつながっていないということであった。結果として,このように使ったという使い方だけが発表され,その実践の価値や課題の共有にまでは至ることができなかった。 そこで,(2)で述べたように(p.17),校内の事例を蓄積し,使い方や課題を次の実践や来年の実践に生かすという目的をはっきりと示したのである。その目的を達成するため,実践についてはその具体をできるだけ掘り下げ,子どもの様子はどうだったのか,どのような点が良かったのかなど次の実践につながるような情報交換を目指すことを研究協力員と確認した。その結果として現れたのが,(2)で紹介した場面である。 共通したのは2点である。1点目は実践の価値付けを行い,その実践を一般化して捉えたり他の実践と関連付けたりして,汎用性の高い使い方に変えた点である。ある使い方は,その時点では学年と教科や単元に限定されたものになっている。しかし,第1章でも述べたように,情報の収集,整理・分析などの学習過程に当てはめた使い方をしている活用方法であれば,それは他の教科等や単元にも応用可能である。そういった汎用性の高い使い方に注目して,他の活用場面と関連付けることができるように促すこと,これが主任の役割の一つといえそうである。 2点目は,課題や留意事項の整理である。実践交流においては,GIGA端末のメリットが話題の中心になりがちだが,今や我々のライフラインになりつつあるICTはメリットのみをもたらすわけではない。扱うためには,情報を吟味する力や危険を回避する力など十分な情報活用能力が要求される。ゆえに,危険だから使わせないという選択肢をとることはできない。ある程度コントロールされた環境において,失敗や間違いを含めた体験をさせる中で,情報活用能力を育成することが必要である。そのために指導者は,大きな失敗に陥らないよう何に留意すべきなのか,何が課題となりやすくそれはどのように指導すべきなのかなど,考えていく必要がある。 整理すると,校内の実践交流にあたっての主任の役割は, ・実践交流の場,情報の蓄積の意図を明確に伝えること ・各実践を掘り下げ,価値を引き出し,あるいは価値付けること ・実践の汎用性を示し,他の実践につなげること ・課題や留意事項を共有すること であろう。 小学校 情報教育 20
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