614 R3最終稿【木村】
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第2章 個人の取組にしないために ※①②③の番号は筆者による ※④⑤の番号は筆者による (8)文部科学省「GIGAスクール構想のもとでの社会科の指導について」 https://www.mext.go.jp/content/20210625-mxt_kyoiku01-000015438_rs.pdf 2021.12.03 (9)文部科学省「情報活用能力調査(小・中学校)」2014 図1-3 国語科,社会科でICTの活用例 第1節 校内組織づくりの必要性 (1)ICT活用促進の要因 2018年度PISA調査によると,日本の学校の授業におけるICT活用頻度はOECD加盟国の中で最下位であった(10)。GIGA端末が児童生徒一人一台配付されたが,校内においてどのようにGIGAスクール構想を推進するかが課題となるであろう。 ICT活用に対する教員の熱意に影響を与える要因について,木原らは ①ICT環境の整備と「使いやすい」という条件 ②教師固有の状況の変化 ③所属校における研究的な活動 を挙げている(11)。 ①については,ICT機器の数が少なく自由に使えなかったり,操作が困難すぎたりすると熱意が低下するということであろう。これについては,児童生徒一人一台,教員にも同様にGIGA端末が配付されているので,木原らの調査時期より改善されている。しかし,ICT機器に対する操作苦手意識がICT活用頻度の低さの要因になっているという指摘もされている(12)ように,操作が難しいという印象を感じさせてしまうと,いかに環境が整っていたとしても活用頻度は低下してしまう。操作が簡単なソフトや普段から使い慣れているソフトを使うことを前提として,授業を考えていく必要があろう。 ②については校内研究が熱心な学校への赴任や,ICT活用を基盤とする授業を担当せざるを得ない状況への遭遇などが例として挙げられている。使わざるを得ない状況も一定必要だということであろう。 ③については,校内研究に位置付いたICT活用によって子どもの学びの充実を実感できた場合,研究授業について他者からの称賛を得られた場合が挙げられている。 また,福本らの研究によると,ICTを使った授業の実践経験の促進には ④試行機会の確保 ⑤ICTの利便性や有効性を実感できる機会の確保 が必要であると示唆されている(13)。 ④は,ICTの様々な使い方を試すことのできるような環境整備と,使い方についてのアイデアの交換機会や研修機会を指す。思いついたアイデアを簡単に試すことができる環境と,どのように使うかのイメージをもつことが重要だとされる。環境整備という点では,①と重なっている。 ⑤は,ICT利用による利便性や教育効果の高まりの実感を指す。ICTが既存の方法やアイデアより良いものであると知覚され,その利用による成果を実感できることが,ICTの利用実践の経験を増幅させることが示唆されていたが,これは③と重なっている。 両研究から得た示唆をもとに実践の方向性を考えるならば,校内研究に位置付けたり,ICT活用を推進するチームを組織したりすることが必要であろう。ICTを使わざるを得ない状況にするのである。そうして行われた実践をもとにアイデアの共有を行うことで,メンバーのICT活用の幅が広がるであろう。効果的な実践ができたという報告によりその方法と成果が共有されれば,自分もやってみようという各メンバーの意欲につながるはずである。また,これからやってみようと思う活用方法を試してみる小学校 情報教育 15 145

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