614 R3最終稿【木村】
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提出すれば指導者が把握しやすい。また,カードを蓄積していき,それを比較するよう指導者が促すことで,自身の行動の見直しや成長の実感へとつなげることもできるであろう。 ③デジタルドリル 使い方も簡単で,様々なプリントを用意する手間が一気に省けるのがデジタルドリルである。児童が問題につまずくと,プログラムがその問題を解くために必要な過去の単元を判断し,取り組むべき問題を提示してくれるので,児童個々の状況に応じた個別最適な指導がしやすくなる。様々な教科,単元の問題にアクセスできるので,児童が必要に応じて問題を選択できるのも魅力である。研究協力校においても,授業時間外で最も活用頻度の多いGIGA端末活用方法がデジタルドリルであった。しかし,デジタルドリルをただ取り組ませるだけでは,児童の学習の定着に寄与するとは言い難い。 紙ドリルであれば,そこに答えは載っておらず,間違えた場合は自分で考えて直さなければならない。児童は自分の間違いを分析し正しい答えを導き,指導者にそれを見せ,丸をもらわなければならなかったのである。しかしデジタルドリルでは,自動的に答えが表示される。子どもはそれを見てから問題をやり直すのだが,それがすなわち理解していることにはならない。答えを見て,覚えたことを再度入力しているにすぎないケースがある。そうしてできるだけ早く問題を解き終え,ご褒美の点数をもらい,友だちと点数競争に興じる姿を様々なクラスで見た。 点数を集めることが目的ではないことを伝え,正しい取り組み方を伝えるべきであろう。例えば,研究協力員の一人は,児童全員の学習履歴を見ることができると実際の画面を児童に示した上で,もうわかっている問題を何度も解いて点数稼ぎして自己の成長になるのかとクラスの児童に話していた。以降,そのような取り組み方は減少し,まだ解いていない問題や,完答できなかった問題に取り組む様子が増えたという。GIGA端末の日常化を目指したいのではあるが,せっかく取り組むのであるからGIGA端末を使っただけにとどまらない効果的な取組にしたい。現在,紙ドリルとデジタルドリルの併用による効果的な取り組み方の研究など,様々な実践が模索されている。効果的な取り組み方を提示することが今後の課題の一つになろう。 第3節 中学年の実践より (1)ローマ字入力のスキルを前提として GIGA端末の活用における中学年以降と低学年の大きな違いは,キーボードによるローマ字入力である。3年生国語科に「ローマ字」「コンピュータのローマ字入力」という単元が設定されているので,教科の指導事項としてもローマ字入力を扱うことになる。 そこで,例えば国語科で文書作成ソフトやプレゼンテーションソフトを用いて自分の考えをアウトプットする活動が想定される。あるいは,スライドに簡単な考えを書いて共有することなども想起されるであろう。しかし,低学年から比べて子どもたちの思考力,判断力,表現力は当然成長しており,各教科において求められる記述量も増えている。そこで発生するのは,ノートに鉛筆で書くより時間がかかったのでGIGA端末を使ったことで逆に効率が悪くなったという問題である。 この問題の原因は二つある。一つ目はタイピングスキルの未熟さである。毎日のように積み上げている紙と鉛筆を使った記述と,今年から取り入れたGIGA端末による記述とでは前者のほうが速いに決まっている。 二つ目は,インプットしたりアウトプットしたりする際に活用する情報量の少なさである。教科書を読んで考えたことを100字程度にまとめる活動のみであれば,わざわざ端末を開いて学習支援ソフトや文書作成ソフトで記述する必要はない。端末を開いて,たどたどしい入力速度で入力する時間を考えると,手書きのほうが速い。では,考えたことをその根拠となる記述とともに200字程度で書き,それらを共有して,考え方の違いを類型化する場合はどうであろう。もし考えを書いている途中で間違いに気付き,最初の方から書き直さなければならない場合,手書きであれば大変である。データであれば,途中に字を挿入したり,部分的に削除したり,あるいは段落ごとコピー&ペーストするだけなので,手書きに比べ圧倒的に速い。根拠となる事柄は,いちいち書き写さなくても,写真で撮った資料を添付すれば済む。手書きの文章を共有しようとしたら,紙を回したり順に発表したりする時間を必要とするが,小学校 情報教育 11 141

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