第2章 思考力,判断力,表現力等の育成の方策 (11)尾崎正彦 『アクティブ・ラーニングでつくる算数の授業』 東洋館 2016.4 pp.28-29 (12)筑波大学附属小学校算数教育研究部 『筑波発 問題解決の算数授業』 2015 pp.11-12 (13)高大接続システム改革会議 「最終報告」 2016.3 p.4 https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/06/02/1369232_01_2.pdf 2022.2.25 (14)ベネッセ教育総合研究所 『第6回学習指導基本調査 DATA BOOK(小学校・中学校版)[2016年]』 2017.3 p.7 第1節 中学校数学科で目指す研究の方向性 第1章第2節(2)③において,中学校数学科では,「思考力,判断力,表現力等」の育成に関わる課題要因の一つとして,「知識及び技能」に重点を置いたテストや高校受験で出される問題の内容があることを述べた。筆者の経験からも,定期テストや単元テストでは,学んだ結果としての知識や技能を問う問題が多くなっていたことは否めない。日々の数学の授業で扱う問題にも同様の傾向があり,数学的な見方・考え方を働かせる数学的活動,すなわち思考したり説明したりする活動が十分に行われているとは言い難い現状がある。 また,1時間の授業の最後に,練習問題の答えを正しく求めることはできていても,なぜこの方法で正しい答えが求められるのかは説明できずにいる生徒を目にすることがよくある。このような生徒の多くは,例えば問題に含まれる数量関係等の条件や解決に用いた計算式の意味など,解決方法に関する理解が十分にはできないまま,その時間に扱った問題に用いた方法を機械的に当てはめて練習問題の解を導いているのである。同時に,指導者も,生徒が練習問題を解けたことに安心していることが多いのではないだろうか。このような授業を繰り返しているだけでは,育成を目指す数学的に考える力や表現する力を高められないことは明らかである。 中学校数学科の授業におけるこのような課題を改善するには,解決に至る過程を重視する授業への転換が必要である。そこで,本研究では,思考の過程を問う問題を設定し,これまでに学んだ知識や技能,数学的な見方・考え方などを駆使して取り組む数学的活動を通して,本時の目標に迫ることができる授業の在り方を模索・実践することとした。一人一人の生徒が問題の解決に向けて思考を働かせることはもとより,結果のみならず思考の過程を表現する学習活動を重視した授業を積み重ねる中で,学習指導要領で求められている「思考力,判断力,表現力等」を高めていきたいと考えている。とりわけ,本研究においては,解決の見通しをもち問題に含まれる条件や既習事項を根拠に論理的に考えを進めることができる力,数学的な表現を用いて思考の過程を簡潔・明瞭・的確に説明することができる力の育成を目指すこととした。 第2節 「思考過程の見える化」とは 前節で述べたように,本研究では「思考力,判断力,表現力等」を高めるために,問題の解決に至る過程を重視した授業実践に取り組む。これまでも,数学科の授業は,生徒が1時間の目標に迫るための問題解決に取り組み,その解決方法について学級全体で,時にはグループで話し合った後,練習問題を解いて学習内容の定着を図るというスタイルが一般的にとられてきた。このスタイルにも,一人一人が思考を働かせる場面があり,考えたことを説明する機会があることを踏まえると,決して数学的に考えたり表現したりする活動が軽視されていたわけではない。しかし一方で,限られた時間の中で扱わなければならない一定の学習内容があるため,数量や図形の概念の定着,問題の解き方に指導の重点を置かざるを得ない現状があることも事実である。結果として,生徒一人一人の思考の過程が表出され,十分に生かされることで思考が深まるような授業にはなり得ていなかったのではないだろうか。 中学校 教科指導(数学科) 7
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