612 R3最終稿【寺井】
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(1)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)』2017.3 p.64 (2)文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)』2017.3 p.65 (3)文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編』2017.3 pp.22-23 (4)文部科学省『中学校学習指導要領(平成29年告示)解説 数学編』2017.3 p.21 (5)前項(3) p.72 (6)文部科学省『OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント』 p.12 (7)文部科学省『国際数学・理科教育動向調査(TIMSS2019)のポイント』 p.2 (8)国立教育政策研究所『令和3年度全国学力・学習状況調査報告書 小学校算数』 pp.8-10 (9)国立教育政策研究所『令和3年度全国学力・学習状況調査報告書 中学校数学』 pp.8-10 (10)尾崎正彦 『「書くっておもしろい!」表現力を鍛える算数授業のススメ』 東洋館 2011.2 pp.10-13 「学力の3要素」を踏まえた指導が十分浸透していないことが課題として指摘されており,その背 景として,現状の大学入学者選抜では,知識の暗記・再生や暗記した解法パターンの適用の評価に 偏りがちであること つまり,高校の授業では大学受験を意識したことによる「知識及び技能」中心の授業を行っているのではないかと推測できる。 この課題は少しずつ改善されつつあるが,中学校でも同様であると考えられる。第6回学習指導基本調査DATA BOOK(小学校・中学校版)[2016年]によると,受験に役立つ力を学校の授業でも身に付けさせることを重視する傾向が年々強まっている(14)。実際に高校受験の数学では,解に至るまでの過程よりも結果のみを求める問題が多く,筆者の経験からも練習問題やテストでは立式と解のみを求める問題を多く出題する傾向があった。小学校においても単元テストで子どもたちが点数を取ることで学習意欲が少しでも高まればという気持ちがあるため,指導者は全ての解き方を網羅しなければならないという考え方になる。そのような実態や指導者の思いから,なぜそうなるのかを自立的に協働的にじっくりと考える時間や,問題を解く考え方がどのように生かせるのかということを考える時間よりも,問題を解けるようにすることに時間を費やすことも少なくない。 小学校算数科,中学校数学科においても今一度,授業の在り方を見直し,思考する時間の確保と考え方を共有する場面の工夫を行い,基礎的・基本的な「知識及び技能」の習得のみに偏らない授業展開が必要ではないだろうか。 第3節 研究の方向性 これまで述べてきたように,学級の中には様々な子どもたちが在籍しており,指導者によって固定化された学習展開や時間的な制約があるため,思考が十分に働かない「待ち」の状態や表現力を高めることのできない「聞く」だけの状態が多く生まれる。さらに,公式に数を当てはめて解を求めるのみの授業は,数学的な見方・考え方が働く数学的活動とはならない。そういった授業の在り方では,「思考力,判断力,表現力等」は高まらず,課題を生じさせることは容易に想像ができるだろう。そこで,指導者は主体的に活動に取り組むことのできる一人一人に合った学習活動や学習時間を提供し,児童生徒の思考を活性化させる授業をすることが必要となるだろう。また,自分の考えを他者と伝え合う活動を取り入れ,説明する力や表現する力を育成する必要があるだろう。これは,「令和3年度教育研究の方向性」で述べた「個別最適な学び」や「協働的な学び」が,算数科・数学科においても重要であるということである。 本研究では算数科・数学科の課題やその要因を踏まえ,「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力を伸ばすことに焦点を当て,「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現を目指した授業の在り方について研究を進めていく。算数科・数学科は教科として目指す資質・能力の方向性は同じである。その資質・能力を高めるために,授業展開の在り方や指導方法,子どもの学習の進め方について,それぞれ提案していく。 中学校 教科指導(数学科) 6

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