612 R3最終稿【寺井】
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おわりに 第3章では,一授業での実践の具体を提示し,どのような姿勢や力を育むことができたのかを検証した。しかし,当然のことながら,本研究で育成を目指す資質・能力は,1時間の授業でその育成をなし得るものではない。単元の目標や学習内容を踏まえ,単元を通じて育てることができる資質・能力を具体化した上で,研究の方向性に沿った実践を模索することが必要である。 また,授業だけではなく,定期テストや単元テストから生徒への意識付けも必要となる。第1章で挙げた知識や技能を中心としたテストや,受験に対する課題へのアプローチとして「思考過程の見える化」を取り入れた授業の提案を行ったが,授業の中だけで行われたとしても,従来どおりの知識や技能を中心としたテストを行っていては,資質・能力が育まれたかを見取ることはできない。また,日々の数学の授業に反映させるという,指導者の意識を変えることが,生徒一人一人の資質・能力を育成する授業づくりには必要になるであろう。 実践を通して感じたことは,生徒が筆者の予想を上回る発想をしたり,考える姿を示したりしてくれたことだった。これは指導者の働きかけももちろんあるが,それ以上に,生徒の学ぶ意欲が高いことにあると感じる。しかし,中にはどう考えればよいのか,何から手を付ければよいのかわからないといった困りを抱えた生徒もいる。そのような生徒が取り組めるきっかけをつくれるように,そしてどうすれば解決できるのかを考える一助として本研究を生かしていきたい。全ての生徒が思考し,表現し続ける授業を,これからも追究していきたいと考えている。 最後に,本研究の趣旨を理解し,協力してくださった京都市立中京中学校と京都市立近衛中学校の校長先生をはじめ,両校の研究協力員の先生方,温かく迎えてくださった教職員の皆様,そしていつも一生懸命に思考を働かせてくれた生徒たちに感謝の意を表したい。 中学校 教科指導(数学科) 23

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