今回考えられたみんなのグラフで一次関数でないものもあっ たけどそれはどのような考えのもとそうなったか,一次関数 でないなら何なのか。興味ある課題ができてよかった。これ からも少しでも関数の世界を広めていきたい。 図4-6 考え方ボックスを参考にする 図4-7 不連続な定数関数 図4-5 星形型五角形 三つ目は,自分の考えを数学的に表現できるようにするための手立てを講じることである。「考え方ボックス」の作成や,「数学的な表現を関連付ける」ことを取り入れた実践を行ったが,表現する場面や共有する場面を継続して設定し,生徒が数学的な表現ができるようにしていくように促していくことが必要であると考える。 本研究では,2年生「図形の調べ方」「一次関数」の単元において実践を行った。図形領域・関数領域の他の単元においても,思考の過程に着目する問題を設定し,「思考過程の見える化」を取り入れることは可能であると考えている。また,今回実践を行えなかった領域でも実践を行い,その汎用性を検証したいと考えている。 第1章でも述べたように「思考力,判断力,表現力等」の課題は小中共通である。本研究では,中学校数学科の授業において「思考過程の見える化」を取り入れた実践を行ったが,小学校算数科で行っている取組を中学校数学科で取り入れるなど,小中をつないだ実践を行っていき,9年間を通じて資質・能力を育成していく必要があると考える。 (2)今後の展望 筆者自身の経験として,定期テストをはじめ従来の中学校のテストにおいては,知識や技能を問う問題が多く,性質や公式などを覚えていなければ解けないということがあった。また,生徒が学習場面で教科書を読む,授業の内容をノートにかき写すだけでは,知識や技能を覚えることができても意味理解にはつながっていないと感じていた。そこで,B校において図形の調べ方の単元テストで図4-5のような星形五角形の先端の角(∠a~∠e)の和が180°になることを説明する問題を設定した。図4-6のように,解答するときには単元中に作成した考え方ボックスを活用してもよいという条件で行った。図形の内側にある五角形に着目して多角形の内角の和や外角の和を使って解答する生徒,複数の三角形が重なっていることから三角形の内角と外角の性質を使う生徒,へこみのある四角形と三角形を組み合わせて使う生徒など,考え方ボックスから活用できる考え方を自分で選択して考える姿が見られた。 今後は,定期テストにおいても,知識や技能をどのように活用するかを問う問題を取り入れることが必要だと考えている。授業展開とともに,テストにおいても思考の過程を問うことが,知識や技能を身に付けることに加えて思考や表現を重視することへと生徒の意識を変えていくことにつながるのではないだろうか。 A校の一次関数の実践では多くの生徒が関数のプランを提案するときに,お得といえる理由を書いていた。中にはプランを提案するだけではなく,なぜそのように考えるに至ったのか,その動機も含めて記述したり,インターネットで検索して実際のタクシーの利用者はどのぐらいの距離を利用するのかを調べて,自分の考えとともに記述したりする生徒もいた。また,振り返りで次のような記述も見られた。 一次関数の学習を進めてきて,図4-7のような想定していなかった関数が出てきたために,どのような関数であるのかに興味をもったようである。このように,思考の過程に着目する問題を設定する中で,日常と関連付けて考えたり単元の学習内容を越えて考えたりするなど,自ら課題を見つけて取り組む姿が見られた。 中学校 教科指導(数学科) 22
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