612 R3最終稿【寺井】
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まとめるだけではなく,考えたことやまとめたことを他者に伝えるためによりわかりやすく工夫して説明する姿につながっている。③については96%の生徒が肯定的な回答をしている。ほとんどの生徒が他者の考えを聞き,読み取ろうとする姿勢ができたのではないかと考えられる。④については85%の生徒が肯定的な回答をしている。多様な考え方ができる問題で自分の考えと他者の考えを比較して,新たな視点を得たり,よりよい方法を考えたりすることができたのであろう。 全ての設問に対して80%前後の生徒が肯定的な回答をしており,多くの生徒が自分の考えをかき表す活動や考えを伝え合う活動ができたのではないかと考えられる。自分の考えを説明するためには,問題に対して自分の考えをもつこと,数学的な表現を用いて自分の考えをかくことが必要であり,自分の考えと他者の考えを比較してよりよい考え方を構築していくという,協働的な学びができつつある一つの指標といえるのではないだろうか。 ただ,この調査からは,説明を聞く姿勢ができている生徒より,自分が説明しようとする生徒の割合が低いことも読み取れる。生徒には自分の考えを説明することの意味を働きかけ続けるとともに,考え方を共有する場面で説明を促すための工夫についても検討していかなければならないと考えている。 (4)研究協力員への聞き取りより 実践を通して,研究協力員から次のような声があった。 ・思考の過程を問う問題を設定することで,身に付けてほしい日常に生きる力を見ることができた ので効果が大きいことから今後も行う意味がある。式,表,グラフの使い分けや有用性を理解す ることにつながったと思う。 ・考え方ボックスを使用して提示したり例示したりすることにより,自分の思考の過程を確かな根 拠として使うことができていたので,自信をもって論理展開できていた。何をしていいかわから ない生徒に対して考えるきっかけになり,図形領域では有効,関数では発表するときに効果があ る。自分でまとめたり作らせたりすることで学びがある。低位の生徒には与えてもよいと思う。 ・グループ学び,集団解決の場面で,ICTを活用することで何度書いても,書いて消して試行錯誤 できる。図を見せて直感的に指で指し示すことや,拡大や縮小,ポインタを使うなどが容易にで きる。その場で書きながら説明したり消したりできる。その結果,質問の量も増えて対話が活発 になった。他者の意見と自分の意見を比較して違いを認識し,批判的に見ることもできるのでは ないか。 自力解決や集団解決の場面で,生徒が自分の考えを表現するために,式,表,グラフを使ったり,GIGA端末を活用したりすることで,対話が活発になったという意見をもらうことができた。生徒が自分自身の考えについて理解を深めるとともに,他者の考え方から新たな視点を得ること,わかりやすい表現の仕方に触れることができるなど,「思考過程の見える化」を取り入れた授業が数学的な思考力や表現力の育成を図る一つの方策となり得る可能性を確認することができた。 第2節 課題と今後の展望 (1)実践を終えての課題 本研究の実践を通して,次のような三つの課題が見えてきた。 一つ目は,思考過程の見える化を取り入れた授業を積み重ねることの必要性である。実践の中では十分な表現ができていない生徒も見られたため,考えを表現する活動を継続して取り入れるとともに,表現するための手立てを講じて,今後も実践を行っていく必要があると感じた。 二つ目は,学びを生かして自立的に解決を進める活動を更に重視することである。自分の考えを表現するときに,指導者が指示するのではなく,自ら方法を選択して取り組むことができるようにすることが大切であり,そのためには日頃の実践の中で生徒に選択させる場面をつくることが指導者には求められる。 中学校 教科指導(数学科) 21

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