第4章 研究の成果と課題 図4-1 生徒Mの考え方ボックス 図4-2 生徒Mの考え方ボックスの活用 ・①一次関数を表,グラフ,式で考えると見えなかったことが見えてきたり,本当に関数かが確か められたりと,今まで当たり前にやってきたことが今回の授業で身近な問題を考える事であらた めて関数が何なのか,そこから何が言えるのかなどが理解できたのでよかったです。 ・今回のように②2つを比べるときはグラフが分かりやすかった。グラフや表,式など一次関数を 表せるものには種類があるから分かりやすい方法で表すことが大切だなと思った。 ・日常に近いところにも一次関数が使われているということが分かった。また,③今までは与えら れた関係について調べることがほとんどだったけど,今回は自分たちで考えて関係をつくった。 これらの振り返りからは,一次関数の関係を表すときには表,式,グラフを関連付けて表すことが理解を促すことや(①),二つの関数を比べるときはグラフが効果的であると捉えていること(②)が読み取れる。式,表,グラフから適切な方法,使いやすい方法を選択することの大切さやよさを実感したようである。 また,自分でプランを考えるような問いは,思考を活性化することにつながったことが読み取れる(③)。事象と式,表,グラフを関連付けて考える問題に取り組むことで,二つの事象の変化の規則性や対応関係を根拠に,条件に合った関数をつくることができたと考えられる。そして式,表,グラフを用いて関数関係をつくる活動,その関係を説明したり読み取ったりする活動により,関数に関する見方・考え方を豊かにすることができたのではないだろうか。 しかし一方で,プランの内容は考えているが,グラフに表すことができなかった生徒や,プランの内容やグラフは記入しているが,プランの説明の記述が途中で止まっている生徒もいた。自力解決では自分の考えを十分に説明できなかったり,途中で行き詰まったりしたことが考えられる。このような生徒たちへの支援として,日々の授業の中で,数学的な表現を関連付けて考える活動や考え方を共有して説明し合う活動などを取り入れたが,それぞれの活動における効果的な手立てについて更に検討していく必要があると考えている。 第1節 思考過程の見える化と生徒の変容 (1)考え方ボックスの活用 第3章で述べた実践の具体から,これまでの授業の在り方では見えにくい思考の過程を見える化することで,生徒たちが新たな考え方を獲得することにつながったと考えている。「思考過程の見える化」を取り入れた授業では,既習の知識や技能を活用して,思考の過程に着目する問題を解決することに取り組んだ。既習の知識や技能を活用することは,問題を筋道立てて考えていく上でも必要なことである。2年生の図形領域では,既習の図形の性質などを根拠に,筋道立てて説明する活動を取り入れた。また,毎時間の学びを考え方ボックスにまとめることで,既習の知識や技能をその後の授業でいつでも取り出せるようにしておいた。 生徒Mは,図4-1のように考え方ボックスを学習支援ソフトの付箋にまとめていた。そして,図4-2のように授業の中で思考する場面や自分の考え方をまとめる場面で,考え方ボックスから過去の考え方を取り出して活用していた。 中学校 教科指導(数学科) 18
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