B校において「一次関数」の中の「一次関数の利用」の単元で,1年生の関数領域の学習や,本単元の前時までに学んできた一次関数の特徴を活用し,式,表,グラフなど数学的な表現を関連付けて考えることを想定した実践を行った。日常の事象の中には,数量の変化を値の変化として捉えて,数学の問題として考えることができる事象がある。二つの数量が伴って変わることから関数として考えられる事象もあり,関数として捉えることでわかっていることだけではなく,将来起こり得る事象を予測することができる。本実践は日常に近い場面を取り上げ,関数を利用して解決できる問いを考えた。 タクシーの料金は初乗り料金と加算料金の合計で決まります。加算料金は距離に応じて一定の割合で 増えると考えます。あるタクシー会社の料金は次のように設定されています。 図3-12 不必要な補助線がある 図3-13 性質を活用していない り入れ,「思考過程を見える化」する授業を積み重ねることが,数学的な思考力や表現力を高めていく可能性があることを感じられる実践となった。 しかし一方で,一部の生徒は自力解決では正しい答えを導くことができなかったり,答えには辿り着いたもののその求め方は説明できなかったりした。図3-12の生徒は,補助線や角を表すマークをかき込むなどして試行錯誤している様子はうかがえるが,不必要な補助線も入れていて説明が成り立たないことが考えられる。また図3-13の生徒は,説明の中に三角形を作って考えるという方針は書いているものの,「角を測る」という説明がされていることから,既習の性質等を活用した求め方ができていないと考えられる。この他にも,学び合いの場面では他の生徒の説明を聞くだけになっている生徒もいた。このような生徒たちへの支援として,「考え方ボックスの活用のさせ方」「考え方を共有する場面での手立て」など,より効果的な支援の在り方について更に検討が必要である。 第2節 事象の変化の傾向を読み取り説明する ~2年生「一次関数」の実践~ 具体的には,下のような架空のタクシー会社の二つの料金プランを比較して考える問いを設定した。 <Aプラン>乗車距離が2kmまでは初乗り料金700円,以後0.1kmあたり40円加算 利用者を増やすためにお得な料金プランを考えました。 <Bプラン>乗車距離が1.5kmまでは初乗り料金400円,以後0.1kmあたり50円加算 Bプランは全ての利用者にとって本当にお得なプランでしょうか? (1)式,表,グラフを用いて関数として考える 最初に指導者と生徒で次のようなやり取りを行った。 生徒G:①1.5kmまでやったら(Bプランがお得) 指導者:②2kmやったらどうですか。 生徒G:③2kmやったらAかな。 生徒H:④B(プランのタクシー)に乗る。安いから。 中学校 教科指導(数学科) 15 生徒Gは問題を見て,1.5kmまでならBプランがお得と判断した(①)。そこで指導者が②のように尋ねたところ,生徒GはAプランがお得だと判断し,生徒HはBプランがお得だと判断して意見が分かれた(③④)。生徒Hのように,何らかの理由から「安い」と判断して選んだと思われる生徒もいたが,生徒Gのように最初はBプランがお得でも,途中からはAプランがお得になると,漠然と考えて選んだ生徒もいた。2㎞の時点では,どちらがお得かはっきりしていなくても,ほとんどの生徒は,最初はBプランがお得で,途中からAプランがお得という状況に変わるというイメージはできたようであった。さらに,指導者が「どこからAプランが安くなるか,調べてもらおうと思うけど,どうやって考えたら
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