以上に述べたとおり,本節で示した四つの手立てを授業に取り入れ,自分の考えをかき表す活動や考えを伝え合う活動を通して「思考過程の見える化」を図り,焦点化した資質・能力の育成を目指したいと考える。本研究の構想を図2-7に示す。 第3章 実践の具体 図2-7 研究構想図 図3-1 へこみのある四角形 共有場面では,GIGA端末を活用することで,効率的に考えたことが共有できる。他者の考えを視覚的に捉えることもでき,学習内容によっては複数の考え方を比較する中で,統合的・発展的に考えたり,よりよい考え方を見いだしたりすることもできる。自分の考えだけに終始するのではなく,思考の過程を他者と共有し協働的に学ぶことは,互いに新たな考え方を知ることができるだけではなく,その後の学習に生かすことができる数学的な見方・考え方を豊かにすることができる活動であると考えている。 本章では,第2章で述べた研究の方向性や授業展開における手立ての有効性を検証するために,A校・B校2年生の図形領域及び関数領域の単元において取り組んだ,「思考過程の見える化」を取り入れた実践を紹介する。 第1節 根拠を明確にして角の大きさの求め方を考える ~2年生「図形の調べ方」の実践~ A校において,「図形の調べ方」の中の「多角形の角」の単元で,1年生の図形領域の学習や本単元の前時までに学んできた図形の性質を使って,根拠を明確にして角の大きさの求め方を考える実践を行った。具体的には,図3-1のようなへこみのある四角形の∠xの大きさを求めるというものであるが,角の大きさを求めることが中心ではなく,「根拠を明確にして求め方を考えること」「多様に出てくることが予想される求め方を,考え方によって分類する活動」に重きを置いた。そのため,生徒に提示する問いは,「∠xの大きさを求めるだけではなく,根拠を明確にして角の大きさの求め方を考えましょう」と設定した。 (1)図と言葉を関連付けて説明する 自力解決の場面では,生徒は問われていることに沿う形で,図を見ながらノートに自分の考え方を記述したり,学習支援ソフトで共有した図に直接考え方をかき込んだりしながら考えた。中には様々な補助線を引きながら考えたり,考える過程で間違いに気付いて修正を加えたりするなど,試行錯誤して考える姿が見られた。指導者からは,「図を使って∠xの大きさを求める説明や考え方をかくこと」「できるだけ多くの方法で考えること」を伝えた。 考える過程で,考え方ボックスから自分が以前に使った考え方を取り出し,それをもとに考えたことをノートに記入し,学習支援ソフトの写真撮影機能を使って撮影し共有する生徒や,一つの方法で角度を求めることにとどまることなく,これまでの学びを生かして複数の考え方をまとめる生徒もいた。 ここでは生徒Aの考え方(次ページの図3-2)と生徒Bの考え方(次ページの図3-3)について示す。どちらも補助線で二つの図形に分けているが,中学校 教科指導(数学科) 11
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