612 R3最終稿【寺井】
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(3)数学的な表現を関連付ける 3点目は,式,図,表,グラフといった数学的な表現を関連付けて考えたり表したりすることを促す。数学の学習では,事象に含まれる数量関係を一般化して表せる式を用いて処理することが多くある。式には,値を当てはめて簡単に結果を求めることができるというよさがある一方で,題意に合った式をつくることができなかったり,値を正しく当てはめることができなかったりすると正しい結果を得ることができないなど,生徒にとっては抽象度が高く,意味理解に難しさがある。 そこで,思考の過程で,式だけではなく,図,表,グラフなども活用させることで,自分の考え方や根拠をより明確にし,解決方法についての理解を確かにすることができるようにしたいと考えた。 例えば,図2-3の一覧表をもとに,8月6日以降のダムの貯水量を予想するような問題を考えるとき,最初から式に表すことが難しい生徒も,表やグラフに表すことで考えを進めることができるのではないだろうか。図2-4の表からは変化がほぼ一定であることを読み取ることができる。その変化のきまりをもとに,表のわかっていない部分を書き加えていけば,求めたい日にちの貯水量を予想することができる。また,グラフで表すと図2-5のようにほぼ直線になることから,グラフを延ばせば求めることもできる。表で変化が一定であることや,グラフが直線になることから,貯水量は日数の一次関数であることが読み取れる。一次関数であることを利用すれば,表やグラフと関連付けて式に表すことができ,式に値を代入して解を求めることができるのである。 このように,式,図,表,グラフを関連付けて考えることで,根拠が伴った形で考え方についての理解を確かにしたり,他者にわかりやすく説明したりすることにつなげることができるのではないかと考えている。 (4)考え方を共有する 4点目は,自力解決で考えたことを共有する場面を設定する。考えを伝え合う活動には,自分の考えを他者に説明することで,考えをより確かなものにする効果がある。さらには,他者の考え方についての説明を聞いたり,図やグラフなどを用いた記述から考えを読み取ったりすることで,新たな考える視点を獲得し,自分の考えを深めることにもなる。 例えば,本節(1)の図2-1の例でグラフを使って考えるときに,図2-6のように「AのグラフをBのグラフに重ねることで,比較がしやすくなる」という生徒の気付きを全体で共有する。二つのグラフを横に並べて比較していた生徒にとっては,重ねるという方法を用いると比較しやすくなると実感し,二つのグラフを考察する際の新たな方法を獲得することができるのである。 図2-6 二つのグラフを重ねて考える 図2-3 ダムの貯水量一覧表 図2-4 関係を表す表 図2-5 関係を表すグラフ 中学校 教科指導(数学科) 10 A A B B

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