612 R3最終稿【寺井】
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(1)思考の過程に着目する 1点目は,思考の過程に着目できるように,問いの設定に工夫を加えることである。指導者が多様な考え方ができる問いや,結果が一つに決まらない問いを設定する。こうすることで,生徒が考えるときに結果が正しいかどうかだけではなく,結果に至るまでの途中の考え方,つまりは思考の過程に着目することができると考えている。 例えば,データの活用領域で,同じ資料をもとに問題の設定をするときでも,知識や技能を問うだけではなく,学んだ知識や技能から根拠を示して考える問いを設定する。図2-1のように二人の50m走のタイムを並べた一覧表を示し,その記録から,どちらか一人を選手として選ぶ場面を考える。このときに,「平均値を求めて選手を選びなさい」という問いにすると,全ての生徒が平均を計算して結果を求めることになる。これを,「どのように選手を選びますか」と問うことで,平均値だけでなく中央値や最頻値など,これまでの学びをもとに,選び方を様々に考えることができる問いにすることができる。このように,同じ場面であっても問いを工夫することで,結果に至る過程に着目させることができると考えた。 生徒は,既習の知識や技能を覚えているかどうかで解を求めるのではなく,既習事項の中から何を使えば問題を解決できるかというところから考えることになる。また,解決活動を進める中で自分の考えを見直したり,異なる考え方を試したりするなど,試行錯誤しながら問題解決に向かうと考えている。 (2)学びを生かす 2点目は,毎時間の授業で,生徒がこれまでの学びを生かすことができるようにすることである。数学の授業では,生徒自身が考え方を選択して問題を解いていく。しかし,新たな問題の解決の見通しをもつ場面で,過去の学びと結び付けることができず,思考を進めることができない生徒もいる。 そこで,生徒自身が授業の中で学んだ考え方を蓄積し,いつでも取り出して使える「考え方ボックス」を作成する。GIGA端末を活用して,図2-2のように学習支援ソフトを使って,学んだ考え方をそれぞれファイルにして保存する。これからの学習に生かすべく,自分自身が振り返りやすいようにまとめたものを,クラウド上の個人フォルダに蓄積していく。 新たな問題の解決に行き詰まった生徒は,「考え方ボックス」から解決に生かせそうな考え方を取り出し,自分の力で解決活動を進める。そうすることで,考えの根拠を明確にして解決を進めることができ,説明に生かすこともできる。 クラウド上に「考え方ボックス」を作成することで,既習事項をまとめて管理したり,簡単に取り出して使ったりすることができる。自分で名前を付けておけば,自分自身が見返して,使いやすいように整理することができ,解決方法の見通しをもつ場面や,他に方法がないか考えるときなどに活用することができると考えている。 図2-2 考え方ボックス 図2-1 タイム一覧表 中学校 教科指導(数学科) 9

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