612 R3最終稿【寺井】
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毎時間の学習に「思考過程の見える化」を取り入れることが望ましいが,学習内容によっては取り入れることが難しい時間もあるだろう。また,50分という決められた時間の中で,練習問題に取り組む時間を十分に確保できなくなることも考えられる。単元の学習のどの時間に「思考過程の見える化」を取り入れることが効果的であるかを吟味したり,GIGA端末を活用することで問題場面の把握や考え方の共有等を効率的に行ったりすることで,できる限り多くの授業で「思考過程の見える化」を取り入れた実践を行い,資質・能力の育成を目指す上での有効性を検証していきたい。 次節では,「思考過程の見える化」を取り入れた授業展開の各場面における,具体的な手立てや支援について述べる。 第3節 「思考過程の見える化」を取り入れた授業展開における手立て そこで,本研究では,問題の解決に向けて試行錯誤しながら考えた過程を,言葉に加えて式や図,表,グラフなどを用いて数学的に表現し,それをもとにして更に思考を広げたり深めたりする学習活動(以下,「思考過程の見える化」)を取り入れた授業を構築し,実践に取り組むこととした。 ここでいう思考過程は,必ずしも正しい結果に至った過程だけを指すものではない。間違った答えに至ってしまった過程や結果に至る途中までの考えも含むものであり,これらを1時間の目標に迫ったり異なった視点からの思考を促したりすることに生かし,価値付けることが大切である。また,解決活動を進める中で考えたことについては,その考えが正しいことを示す根拠となる事柄も含めて,簡潔で,わかりやすく表現できるように指導していきたい。さらには,生徒が表現した思考の過程はグループや学級全体で適時に共有し,自分の考え方や表現の仕方を確かめたり,他者の考えや表現をこの後の学習に生かしたりすることでこそ,見える化することの価値を見いだすことができるのである。 ここまでに述べた「思考過程の見える化」は,1時間の学習過程における以下のような場面において有効ではないかと考えている。 〇解決の方法や結果の見通しを立てる場面 例)解決活動に着手できない生徒が,他の生徒の見通しから解決活動に取り組むきっかけを得ることができる 〇解決活動を進める一人学びの場面 例)思考の過程を表すことで,自分の考えを確かにしたり,他の方法を用いて多様に考えたりすることができる 〇各々が考えたことをもとに学びを深める場面 例)自分の考えと他者の考えを比較したり関連付けたりする中で,よりよい方法を統合的・発展的に考えることができる 〇1時間の学習をまとめ,振り返る場面 例)1時間の学び(知識や技能の定着を含む)を確かにし,次の学びに向けての意欲を高めることができる 生徒は1時間の学習過程のそれぞれの場面で思考を働かせる。その思考の過程を見える化することで,自分自身の考えを深く理解し,根拠をもとに他者へ説明することができるようになるのではないかと考えている。しかし,思考の過程を見える化するためには,指導者による様々な手立てが必要である。本研究を進めるにあたり,次の四つの手立てを講じていく。このときに,蓄積や編集が容易であり視覚的に捉えやすくできるなどの特性があるGIGA端末を活用していくことで,「思考過程の見える化」をより効果のあるものにしていきたい。 中学校 教科指導(数学科) 8

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