609 R3最終稿【丹後】
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(2)「単元のめあて」と「活動の見通し」の決定 課題との出会いが自分事となると,児童は単元を通した目標が考えられるようになるだろう。そこで,本研究では,児童自身が単元のめあてについて考えることを大切にしていきたい。課題解決に向けて単元のゴールのイメージをもち,目標を決定することによって,児童は単元を通して主体的に学ぶことができると考える。また,単元を通した活動の見通しを立てることも重要である。杉山・加納は「学習者の中で自分なりに目標を定めたり,予想したりしてそれがかなわなかった時には,粘り強く試行錯誤することができ,成功した時には次の活動に,より意欲的に取り組むことができる」ということを示している(9)。 つまり,児童が単元のめあてを考えたり活動の見通しを立てたりすることは,児童の学びに向かう力を育む上で重要なのである。 第2節 自己選択・自己決定の場の設定 指導者が一方向的に教授するような授業形態だけでは,児童の学びに向かう力を育むことは難しいのではないだろうか。児童自身の意思に基づいて決めたことだからこそ,児童は主体的に取り組もうとするのである。そこで,児童の思いが反映される活動となるよう,自己選択・自己決定を促す場面を設定することとした。本節では,その具体的な手立てについて述べていく。 (1)表現内容や表現方法の工夫 3年生Unit4「I like blue. すきなものをつたえよう」の単元では,果物や野菜,色,食べ物,スポーツなど様々なものについてお互いの好みを尋ね合ったり紹介し合ったりする。本市においては,低学年「英語活動」における様々な活動を通して,果物や野菜,色などの英語表現について既に慣れ親しんできたという学習経験が存在する。それを生かし,「新たな言語材料」として導入するのではなく,「スポーツ以外にも何か英語で伝えられそうなことはあるかな」と問いかけ,これまでの学習活動を振り返る機会を意図的に取り入れる。そうすることで,「好きな色も伝えられるね」と伝えられそうな表現を考えたり,「ぼくの好きな果物,英語で言えるよ」「わたしの好きな果物はpeach」「I like peach」などのように進んで英語で表現しようとしたり,または「絵本の読み聞かせをした時に動物も言えるようになったよ」といった指導者の予想を超えた反応を示したりすることも考えられる。 外国語学習において,新たな言語表現との出会いは,言語による表現を豊かにしていく。しかし豊かなコミュニケーションを図ろうとする上で大切なことは,これまでに慣れ親しんできた表現や大事にしてきたことを振り返りながら,児童が「あの表現も使えないだろうか」「あんなことも伝えられそうだ」と考えることである。そういった気付きを促すきっかけを与えることによって,児童が自ら考えながらコミュニケーションを図ろうとするのである。 また,表現方法についても,「こんな工夫ができるんじゃないか」と自分の思いがよりよく表現され,相手にわかりやすく伝わる方法について創意工夫する姿を大事にする。例えば,先述の例と同じ単元で考えれば,GIGA端末を活用する児童もいればジェスチャーを工夫しながら紹介している児童がいてもよい。児童自身が,相手意識をもって取り組むことが重要なのである。小学校学習指導要領解説にも次のように示されている (10)。 外国語によるコミュニケーションを円滑に行うためには,どうすれば相手により伝わるかを思考しながら,表現する内容や表現方法を自己選択し,尋ねたり答えたりするようにすることが大切である。つまり,まずは児童自身が相手意識をもって表現内容や表現方法を考えることが重要であり,それが外国語を用いた円滑なコミュニケーションにつながるということなのである。 16 小学校 外国語教育 6 (下線部は筆者による)

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