609 R3最終稿【丹後】
7/24

① 児童の興味・関心を把握する ② 学習内容や状況を把握する ③ 児童の力を把握する 第1節 児童の知的好奇心を高める課題設定の工夫 知的好奇心とは,ある物事に対して「もっと知りたいな」と思う気持ちであり,児童の「学びに向かう力」を育むための重要な要素であると考える。本節では,児童理解に基づいた課題設定の工夫の重要性について示していく。 (1)児童理解から課題設定を 児童の「もっと知りたい」といった知的好奇心を高めるためには,児童が興味・関心を示し意欲的に取り組める環境を意図的に設定することが重要であると考える。そのためにはまず,児童の実態を把握し児童理解を深めることが必要である。高島は,児童理解の視点として次の3点を挙げている(7)。 このように,まずは「児童が今,どのようなことに興味・関心を抱いているのか」「他教科の学びを生かせることはないだろうか」「どのような力があって,これからどのような力を付けていきたいか」を考えることを意識した授業づくりを行っていく。 次に,実態を踏まえた上で題材を工夫していくのである。東野・高島は,児童が主体となる題材の例として,右に示すような具体を挙げている(8)。このことから,児童の実態と照らし合わせながら題材を考え工夫していくことが,児童の学びに向かう力を育むための環境を生み出すことにつながると考えた。 では,実際に2年生Unit2「サラダで元気」の単元を例に挙げてみよう。この単元は、身近な野菜の英語表現に慣れ親しみつつ,単元終末では児童にとって大切な人のためにそれらの野菜を使ったオリジナルサラダを作るといった単元である。ここで,児童がより主体的に学習に取り組める単元との出会いとなるように,課題設定を工夫するのである。 2年生児童は,生活科の学習単元「大きく なあれ わたしの 野さい」において,身近な植物(野菜)を継続的に栽培する活動に取り組む。普段何気なく食していた植物が,種からどのように育っていくのか,成長させるためにはどのような関わりが必要なのかを実際に栽培しながら学ぶことを通して,植物に対する親しみを深めていく児童の姿が予測される。 それらを踏まえて,英語活動におけるこの単元との出会いの場面では,児童が親しみをもって育てた野菜について振り返り,それらを題材に「自分たちが育てた野菜を使って,何かおうちの人を喜ばせることができないかな」という課題を設定する。その際,実物を使用するわけではないが,自分たちが大切に育てた野菜を扱う題材だからこそ,「あんなことができないか」「こんなことができないか」とイメージを膨らませることができると考えた。もちろん,こちらが予想もしなかった考えがたくさん出てくることもあり得るだろう。しかし,児童のこのようなあふれる思いを共感的・受容的に受け止めつつ,指導者がゴールの姿を提案するのである。 学習したことを生かせる題材を扱うからこそ,新たに出会う英語表現に対しても「知りたい」「言ってみたい」といった思いが高められるのではないかと考える。このように,児童の実態と題材を結び付けて考えながら課題を工夫していくことで自分事となり,児童の知的好奇心が高められ,学びに向かう力も育まれるのである。 児童の普段の会話や日記,遊びなどから児童が興味あるものや学習したいことなどをつかむ。 各教科や他領域に関しても何をどのくらい学習しているかを把握することで,他との連携を図りながら内容を考えることができる。 どのような力が不足しているのか,どのような力をつけていかなければならないのかを考える。 小学校 外国語教育 5 ・自己や成長が表現できる題材 ・学ばせたい英語表現が使われている絵本や題材 ・学習したことを生かせる題材 ・日常の児童の生活経験を生かせる題材 ・児童の興味のある絵本や題材 ・児童が楽しめる題材 15

元のページ  ../index.html#7

このブックを見る