609 R3最終稿【丹後】
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第2章 「学びに向かう力」の育成を目指して (1) 文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編』 2017.7 p.12 (2) 前掲 (1) pp.11-17 (3) 松村英治 相馬亨『『学びに向かう力』を鍛える学級づくり』 2017.3.1 pp.44-45 (4) 前掲(1)p.15 (5) 前掲(1)p.15 14 そのためにも,児童がこれまでの学びを振り返り,新たな学びに気付けるような学習展開が必要である。そして,児童が思考を働かせながら自分の伝えたい内容や表現方法について,これまでの学習経験を振り返りながら考える時間を大切にしていくことで,児童の主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度は育成されていくと考える。 ここで注目したいのは,中学年「外国語活動」における「(3)学びに向かう力,人間性等」の部分である。「言語やその背景にある文化に対する理解を深め」とあり,これは児童が言葉の大切さや豊かさ等に気付いたり,言葉への興味・関心を高めたり,これらを尊重する態度を身に付けたりしようとすることを示している。それは,児童の外国語の音声や基本的な表現への十分な慣れ親しみの上で成り立つものであるといえる。つまり,限られた言語表現ではあったが,低学年「英語活動」から外国語の音声やごく基本的な表現に慣れ親しむことを大切にしていくことは,中学年「外国語活動」段階での慣れ親しみの更なる充実につながるのではないかと考える。それによって言葉への興味・関心がより一層高められ,児童が外国語を用いて話したり聞いたりしようとすることにつながるのではないだろうか。 (2) 本研究における「学びに向かう力」とは 本研究を進めていく上で,「学びに向かう力,人間性等」の資質・能力について触れておきたい。 資質・能力の三つの柱のうち「学びに向かう力,人間性等」は,「(1)の「知識及び技能」や(2)の「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素」であり(4),外国語教育においては「児童が言語活動に主体的に取り組むことが外国語によるコミュニケーション能力を身に付ける上で不可欠であるため,極めて重要な観点である」とされている(5)。 実際のコミュニケーションの場面で,児童が自信をもって外国語で表現できるようになるために,「知識及び技能」を獲得したり,「思考力,判断力,表現力等」を身に付けたりしようとする態度が重要である。例えば,友だちと好きなスポーツについて外国語で伝え合う活動において,スポーツの英語表現や好みを尋ねたり答えたりする英語表現に十分慣れ親しもうとしたり,実際のコミュニケーションの場面ではたどたどしくてもジェスチャーなどを使って何とか外国語で伝えようとしたりする。そして,その自分の姿を振り返り,次はもっと工夫して相手にわかりやすく伝えようとするといった態度である。こうした活動を繰り返すことで児童に自信が生まれ,「次はもっとこうしよう」という意識が高められていくのである。 このように本研究では,児童が主体的に言語活動に取り組もうとする態度を「学びに向かう力」とし,その育成を目指していきたいと考える。 「学びに向かう力」を育成するためには,児童自身がまず,外国語に興味・関心をもち,外国語を用いて伝え合う楽しさを実感することが重要であると考える。松村・相馬は「楽しさは,その瞬間の味わいだけでなく,学びに向かう力の源泉ではないか」と述べており(6),その具体について示している。その中でも,本研究では「知的好奇心による楽しさ」と「自己選択・自己決定による楽しさ」に注目し,児童の「学びに向かう力」の育成を目指していく。 小学校 外国語教育 4

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