表1-1 低学年「英語活動」と中学年「外国語活動」の目標 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,話すことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1) 外国語の音声やごく基本的な表現に慣れ親しむようにする。 (2) 身近でごく簡単な事柄について,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う。 (3) 主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。 昨年度の研究では,初めて外国語に触れる段階であることに加え,低学年の発達段階も踏まえ,非言語的要素に着目しながら相手意識のあるコミュニケーションの具体的な姿への気付きを促してきた。中学年,高学年と外国語学習が積み重なっていくことで,言語表現も豊かになっていくであろう。低学年「英語活動」で大切にしてきた相手意識を土台に,非言語的要素の活用の重要性を再認識とするとともに,言語による,外国語によるコミュニケーション能力を身に付けていくといった次の段階の外国語教育について考えていくことが必要なのである。 第2節 本研究が目指す児童の姿 本研究では,研究対象を低学年「英語活動」と中学年「外国語活動」とし,昨年度の研究も踏まえ,改めて低学年「英語活動」の意義について検証し研究を進めていく。その中で,児童自身が主体的に学習に取り組もうとする「学びに向かう力」に着目し,児童の「主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度」の育成を目指していきたいと考える。 (1) 低学年「英語活動」と中学年「外国語活動」 まず初めに,京都市が定める低学年「英語活動」の目標,小学校学習指導要領(平成29年度告示)解説外国語活動・外国語編に記されている中学年「外国語活動」の目標について見てみる。表1-1がそれらを整理したものである(2)。 低学年「英語活動」(1)や(2)に「ごく」と記されているのは,児童の発達段階を考慮したものであり,児童にとってより身近で簡単なものを扱うことを示している。低学年「英語活動」で扱われた表現や事柄については,中学年の学習内容とスパイラルに関連している。つまり,1年生からの外国語教育によって同じ英語表現でも異なった場面で何度も触れていくことで,十分な慣れ親しみが期待されると同時に,児童が自信をもって表現できるようになるのではないだろうか。 このようなことを指導者が意識して指導を行うとともに,児童自身も気付くことで,中学年「外国語活動」に取り組む児童の姿もまた変わってくるのではないかと考える。松村・相馬は「単元間,教科間の学びの連続性に気付いてこそ必要な『資質・能力』は身に付く」(3)と述べている。一つの教科を取り上げたとしても,単元,学年などで学びが途切れてしまっていることが多いのではないかと感じる。児童がこれまで学んだことを生かして,今の学びをよりよくしていこうとする姿勢は,教科・領域に関わらず必要なのである。 昨年度の研究で大切にしてきた相手意識のある姿は,外国語教育の土台になると考える。実際の活動を通して慣れ親しんできた英語表現やよりよいコミュニケーションにつながる工夫などの既有の知識が,中学年「外国語活動」においても生かされていることを実感しつつ,より主体的にコミュニケーションを図ることについて考え,実践していこうという意識を高めていくことが重要ではないだろうか。 低学年 英語活動 小学校 外国語教育 3 (1) 外国語を通して,言語や文化について体験的に理解を深め,日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに, 外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。 (2) 身近で簡単な事柄について,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う。 (3) 外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め,相手に配慮しながら, 主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとす る態度を養う。 (下線部は筆者による) 中学年 外国語活動 13
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