伝えるとき 聞くとき 図1-3 「伝えること」に関する意識調査の結果【2年】 小学校 外国語教育 2 (n=32) 12 図1-2 「伝えるとき」「聞くとき」に気を付けていることに関する意識調査の結果【1年】 (n=113) った理由と相手児童が感じた思いを共有することで,互いの思いをつなぎ,相手意識をもつことのよさを実感できるようにした。また,「伝える」「聞く」といった視点から,コミュニケーション活動中の自分の姿を振り返るようにした。 これらの実践を通して,英語活動の中で相手意識をもって伝えたり聞いたりすることに対する児童の意識の変容を調査した。 (2)研究の成果と課題 実践の結果,「伝えること」「聞くこと」に対する児童の意識の変容が見られた。 上の図1-2は,児童が実際に「伝えるとき」「聞くとき」に気を付けていることについて調査した結果である。ここから,児童自身が相手意識のある具体的な姿に気付き,その有用性を実感することで,実際のコミュニケーション場面で生かそうとする意識が高まっていることがうかがえた。 また,「伝えること」「聞くこと」に対する児童の意識の変容も調査したところ,どちらに関しても好意的に捉えている児童の割合に増加が見られた。 しかし,「伝えること」に関しては,図1-3のように「わからない」と回答した児童の減少とともに「あまり好きではない」と回答する児童の割合に増加が見られた。外国語によるコミュニケーションを通して,相手に伝える楽しさを実感した児童がいる一方で,伝えることに対して消極的な児童の存在も明らかになったのである。この結果の要因について,小学校学習指導要領(平成29年告示)解説外国語活動・外国語編の次のような記述から検討した(1)。 初めて外国語に触れる段階である小学校においては,母語を用いたコミュニケーションを図る際には意識されていなかった,相手の発する外国語を注意深く聞いて何とか相手の思いを理解しようとしたり,もっている知識などを総動員して他者に外国語で自分の思いを何とか伝えようとしたりする体験を通して,日本語を含む言語でコミュニケーションを図る難しさや大切さを改めて感じることが,言語によるコミュニケーション能力を身に付ける上で重要であり,言語への興味・関心を高めることにつながると考えられる。 つまり,「相手の発する外国語を注意深く聞いて何とか相手の思いを理解しよう」とする姿や,「もっている知識などを総動員して他者に外国語で自分の思いを何とか伝えよう」とする姿の育成を目指すことで,言語でコミュニケーションを図る難しさの実感が生まれたのではないかということになる。そしてその実感は,児童の言語によるコミュニケーション能力や言語への興味・関心の高まりにつながるといえる。
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