609 R3最終稿【丹後】
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第1節 1年次の研究から 第1章 研究主題の設定理由 図1-1 1年次の研究構想図 小学校 外国語教育 1 昨年度より,中学年「外国語活動」,そして高学年では教科としての「外国語科」が導入され,全国的に小学校外国語教育の新たなスタートとなった。本市においては,外国語教育の更なる充実を図るため,独自に低学年「英語活動」を導入した。これまでにも独自のカリキュラムを設定し取組を進めてきた学校もあったが,その内容については様々であった。とりわけ,低学年での外国語教育は,学習指導要領に位置付けられておらず,全国的にも実践事例が少ないのが現状である。 これらのことから,研究を通してその実態把握に努めつつ,よりよい実践についての検証を行い,低学年で外国語教育を行うことの意義について検証していく必要性を感じ,研究を進めた。 (1)「コミュニケーション」を大切にした取組 1年次の研究では,この低学年「英語活動」に焦点を当て,外国語との出会いを大切にするとともに,主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を目指して実践を行った。 低学年児童は,自己中心的な姿から他者の気持ちを推測し始める発達段階にあると捉えた。そこで,コミュニケーションを図る上で大切な「相手意識」に着目し,「相手によりわかりやすく伝えようとする姿」や「様々な情報をもとに相手の伝えようとしていることを考えながら聞こうとする姿」の育成を目指した。図1-1に1年次の研究構想図を示す。 低学年「英語活動」においては,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養うことを目標の一つとして設定している。しかし,外国語に出会ったばかりの児童が使える言語表現は限られているため,言語を用いて十分なコミュニケーションを図ることが難しい。そこで,体感を伴った学びが適している発達段階であることも踏まえつつ,身振りや表情,声の調子など,非言語的要素を用いたコミュニケーションに重点を置いた。非言語的要素の積極的な活用を促すために,次の三つの手立てを講じて実践を行った。 まず,絵本の読み聞かせである。絵本にはそもそも,本文の言葉だけでなく描かれている絵によって聞き手の想像を膨らませることができるといったよさがある。外国語に出会って間もない児童にとって,外国の言葉だけで話の内容を理解することは難しい。そこで,絵本や読み手である指導者からの非言語情報をもとに内容を推測しながら聞くことによって,児童が「聞いてわかった」という実感を得られるようにした。また,一冊の絵本を読み重ねる中で,絵本の内容と関連させながら「Do you like red?」など児童が自分のことを伝えるような質問を投げかけたり,児童の返答に対して共感的に反応したりすることを徐々に取り入れていった。このように,まず「聞くこと」を大切にし,次第に「伝えること」に対する意欲の向上につながる読み聞かせを行った。 次に,目的・場面設定の工夫である。「誰のために」「何のために」といった具体的な目的や場面を設定することを大切にした。児童がぞれぞれの思いを大切に活動し,「自分のことを伝えたい」「相手のことを知りたい」といった気持ちが高められることによって,主体的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を目指した。 最後に,相手意識を育む価値付けである。児童同士のコミュニケーションの中で,互いの言動に隠れている相手意識の存在に児童が気付けるように,指導者は児童に対して意図的な発問や共感的な言葉がけを行うことによって,児童の思いを言語化し,互いの思いをつなぐ取組を行った。児童同士がコミュニケーションを図る中で,相手意識をもってやり取りをしている児童の姿を取り出し,工夫しようと思11

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