609 R3最終稿【丹後】
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おわりに 30 の研究実践の中だけではそれほど多くはなかったが,児童がもつ力の可能性を実感したところであった。 今回の実践の中では,児童の「学びに向かう力」を育む指導者への手立てとして,実践のはじめに「アセスメント表」を作成した。まずは目の前にいる児童の実態を把握して,外国語教育を通してどのような姿を目指していきたいのかを,指導者自身が言語化して整理しておくことは有効な手立てになると考えた。実際,実践を始める前にアセスメント表を活用し,改めて児童の実態を見つめるとともに,育みたい力について整理することは,指導者にとって大事なことであったという研究協力員の声もあった。 しかし,実際に作成し活用していく中で課題もあった。「外国語教育」における学びに向かう力を,「自分と向き合う」「自分を高める」「他者とつながる」といった三つの視点に分けて考え,言語化することが難しいということである。そもそも,「主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度」の育成を目指す外国語教育において,「他者とつながる」は重要な視点であるとともに,ほかの二つの視点とも密接に関連しており,分けて考えることが難しいのではないかということである。外国語教育を通して育成を目指す「学びに向かう力」を育むには,アセスメント表の活用方法について改めて検討する必要がある。 第3節 今後の展望として 2年間の研究実践を通して,改めて低学年という発達段階の素晴らしさを感じている。「外国語」という新たな言語との出会いに対しても物怖じせず,純粋に楽しみながら取り組む姿が印象的であった。聞こえてきた英語を自然とまねてみたり,自分から進んで使ってみたりするなど,持ち前の主体性が無意識のうちに発揮されているのである。こういう主体性こそが,その後の外国語学習には必要なのではないかと感じる。低学年という発達段階において無意識に発揮されている主体的な姿が,実は価値ある姿であるということに気付けるような指導者の関わり方が重要であると考える。それが「仕掛け」と「価値付け」なのである。 「仕掛け」とは,児童がもっている力が発揮されるような環境を整えるということである。本研究の中では「課題設定の工夫」「自己選択・自己決定」という形で,児童が主体性を発揮できる仕掛けを行ってきた。「やってみたい」「伝えたい」「知りたい」といった本物の思いがあって,「自分はこうしたい」という思いが実現される活動の中で,児童は自然と主体的に取り組もうとする姿を見せていくのである。そして,指導者が児童の懸命に取り組む姿を価値付けていく。これが,結果的に児童の学びに向かう力を育むことにつながっていくのではないかと,今回の研究を通して感じたところである。 また,外国語教育においては「言語活動を通して」といった点が特に重要である。実際に外国語を使って自分の考えや気持ちを「伝えたい」と思えるような児童の姿を目指したい。そういう点においても,低学年の発達特性を十分に生かし,「外国語」という切り口で,自分のよさや相手とつながる大切さに改めて気付ける「英語活動」にしていくことが大切ではないかと考える。このような「英語活動」に取り組んできた児童が中学年になった時には,自信をもって外国語を使って自分の考えや気持ちを伝えようとする姿を見せてくれることが予想できる。外国語教育の入口を低学年に位置付けることの価値がそこにあるのではないだろうか。 研究実践を通じて改めて提案したいと考えたこと,それは「もう少し児童の力を信じて委ねる場面を作りませんか」ということである。本研究を進めていく中で,幼児教育から学ぶことが多くあった。自分自身,1年生段階での児童の力をあまり知らずにこれまでいたこと,実際全くの検討違いであったことに反省したところがあった。幼児教育での育ちを踏まえた児童理解から低学年「英語活動」を考えていくことによって,今後の外国語教育の可能性もまた広がるのではないだろうか。 研究活動を進めていく中で,外国語教育に限らず,様々な分野に関わる書物や実践に出会い,触れ,学びながら,いろいろな道を歩いてきたように感じる。歩くのに夢中になりすぎて「あれ?今,私はど小学校 外国語教育 20

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