そういった指導者の意識が,単元を通した児童の主体的な姿を生み出すのではないかと考える。 実際に,課題設定の工夫によって児童自身が学習に対して目的意識や相手意識を高めることができると,単元のめあてを自分たちで考えるとともに,その目標達成に向けてどのような力が必要となるのか,そのためにどんな学習活動に取り組もうかなど,児童それぞれが考えをつぶやきながら単元全体の見通しを立てる姿が見られた。言葉の整理や方向性のコントロールは指導者の大きな役割でもあるが,一番は,児童が考える思いを共感的に受け止める姿勢が重要であると感じた。 このように「単元のめあて」や「活動の見通し」を児童自身が考えることを大切にすることで,児童の主体性が高められている実感が得られたという研究協力員の声もあった。自分たちで立てた目標,自分たちで考えた活動内容だからこそ,児童は自分事として主体的に活動に取り組むことができるのである。 【児童に委ねる】 本研究の手立てとして,「児童自身が自己選択・自己決定する」ことを大事にしてきた。今回の2年Unit3の実践で,「児童に活動を委ねる」場面を多く設定した。これまで,慣れ親しみの活動に関しても指導者主導で進められる時間が多かったように感じる。実践前の研究協力員との話の中で,児童が実際にどれだけ自分たちの力でできるのか不安であるという声もあった。これまで,指導者主導で学習活動を進めてきた分,いざ,そのような環境でなくなった時に,児童が自分の力できちんと取り組めるのかといった不安な気持ちを抱くのは当然のことだろう。 しかし,実際に活動が始まると「じゃあこれやろう」「これってなんて言うんだっけ」と互いに声をかけ合いながら活動に取り組む児童の姿が見られた。研究協力員も,第2時で初めて児童に活動を委ねる時は不安な気持ちとともにスタートしたが,こういった児童の姿を見て,第3時以降は児童の力を信じ,児童の学びに向かう力を大事に見取り価値付けていくことができたという実感を得ている。2年生児童であっても適切な場づくりや材料を揃えておくことで,児童は自ずと主体的に学習に取り組むことができるのである。 また,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う際には,まず伝えたい内容について“自分で”考え,相手にわかりやすく伝わるようにその表現方法について“自分なりに”工夫して,実際にコミュニケーションを図るといったことを大切にしなければいけない。当たり前のようなことではあるが,児童が思考する場面を十分に設定することが必要なのである。“自分なりに”を大切にすることで,内容や表現方法にもオリジナリティーが生まれるとともに,伝える内容が児童にとって本物であるがゆえに互いの「知りたい」「伝えたい」といった思いが相乗的に高められるのではないかと考える。 【豊かな環境づくり】 学べる環境が十分に備わっていなければ,児童の学びに向かう力は発揮されずに終わってしまうだろう。今回,GIGA端末や実物の教材・教具を用意し,児童が必要な時に活用できるように設定しておくことで,児童自身が学びに必要なものを選択して取り組むことができた。このように,児童自身が学び方を選択・決定できることも,児童の学びに向かう力の育成を支える重要なカギではないだろうか。 もちろん,この環境とは“もの”に限ったことではない。指導者といった“人”も児童の学びに向かう力を高める大切な「環境」と捉えることが重要である。実践の中での「価値付け」といった指導者の関わり方によって児童の気付きが促されるとともに,児童の自信の高まりにつながり,「学びに向かう力」も更に高められていくのである。 【「学びに向かう力」の意識化】 今回の実践では,1時間の学習の中で自分がどのように取り組んできたかを振り返るための三つの視点を設定した。第4章第1節の児童の振り返りにもあるように,自分の苦手なところがわかった「その後」自分がどのように取り組んだのか,それに対して自分はどのように感じたのかについて振り返りを行うことによって,自分の成長に目を向けられるようになったという研究協力員の声が聞かれた。今回小学校 外国語教育 19 29
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