表2-2 アセスメント表(例) 図2-2 振り返りカード 小学校 外国語教育 8 18 指導者は,活動のプロセスの中でこれらの力を見取る視点をもっている必要がある。そして,その姿を言語化して児童に意識付けていくことで,児童自らが「伸ばしたい」「必要だ」と意識するようになるのである。もちろん,指導者からの働きかけがいつも児童の変容に結び付くとは限らない。指導者は児童を取り巻く環境の一要因であり,児童の気付きを促す一存在である。しかし,このような働きかけによって,十分に児童の意識化を促す可能性があるといえるのではないかと考える。 そこで,児童の実態を踏まえつつ育みたい力を具体化し,英語活動・外国語活動における具体的な児童の姿や,その姿を見取り,意識付けにつながる場面を明確にしていく。表2-2はそれらを整理するために作成したアセスメント表の例である。 まず,育みたい力を児童の姿として具現化し,言語化していくことから始める。その際,学校教育目標や学級目標をもとに,まずは育みたい力を具体的な言葉で言語化していく。 次に,実際の学習活動ではどのような姿が当てはまるのかを行動指標として整理する。行動指標を可視化することによって,指導者の意識化を図ると同時に,その姿を丁寧に見取り価値付けていくことで,児童の意識付けにつなげていくのである。また,実際の活動後には,図2-2のような振り返りカードを活用し,児童自身もこれらを視点で振り返り,自分の頑張りを実感したり次への目標をもったりすることで,より効果的に学びに向かう力が育まれていくと考える。 ここで重要となるのが,児童の学びに向かう力が発揮される仕掛けとなる学習活動を整理したり,時には児童の主体的な学びにつながるきっかけを活動の中に意図的に組み込んだりしていくことである。それは,新たな活動を取り入れなければいけないということではなく,今ある活動を「学びに向かう力を発揮させるきっかけにならないか」という視点で改めて考え,具体的な姿が現れるように構造化していくことなのである。 例えば,アセスメント表の中の「粘り強さ」を児童に育む活動には,指導者がクラスルームイングリッシュを使って指示を出す場面が考えられる。もちろんこれは,「Stand up.」「Sit down.」など,日常的に使用していて,おおよその児童が理解でき正しく反応ができるような場面ではない。普段あまり聞きなれない英語表現を使って指導者が指示を出したときに,始めから「何を言っているのかわからない」とあきらめるのではなく,繰り返される指導者の言葉や身振り,表情などから「こんなことを言っているのかな」と考え実際に行動に移してみようとしたり,じっくり考えて「先生,○○ってことですか」と確かめたりする姿を見取り,粘り強く最後まで理解しようとした価値ある児童の姿を言語化して共有していくのである。その姿を全体でも共有していくことで,他の児童の意識付けのきっかけとなるのである。そして,学習の終わりに児童自身がその視点で自己評価できれば,より深く意識付けられると考える。
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