第2節 思考し判断し表現し続けるために (1)児童が学習活動を選択できる授業デザイン 児童が学習進度に応じて学習活動を選択できるようにするためには,学習時間の柔軟な提供が必要となる。そこで,本研究で提案する授業デザインのイメージを図2-1に示す。 第1節 小学校算数科で目指す研究の方向性 第1章では,児童生徒の「思考力,判断力,表現力等」に課題が生じた理由の一つとして授業展開の在り方に要因があることを述べた。多様な児童がいる学級の中で,学習活動が時間によって区切られ,結果,思考が十分に働かない「待ち」や表現力の高まらない「聞く」の状態を多く生み出した。そこで,本研究では,全ての児童が,1時間の授業の中で思考し判断し表現し続けることのできる授業を提供することで,「思考力,判断力,表現力等」を育成することを目指す。そのために,児童一人一人の学習進度に応じて学習活動・学習方法を選択できるような個別最適な学びとなる授業を行う必要があると考える。1時間の授業のねらいに児童全員が到達することを目標としながらも,そのめあてにたどり着くまでの方法は,児童自身の能力や実態に応じて選択できるようにする。児童は自分に合った学習活動・学習方法を選ぶことで「待ち」や「聞く」の状態にならず,思考し判断し表現し続けることができ,「思考力,判断力,表現力等」が育まれると考える。 小学校 教科指導(算数科) 7 第2章 「思考力,判断力,表現力等」の育成の方策 図2-1 (左)「一般的な授業デザイン」 (右)「思考し判断し表現し続ける授業デザイン」(本研究) (11)尾崎正彦 『アクティブ・ラーニングでつくる算数の授業』 東洋館 2016.4 pp.28-29 (12)筑波大学附属小学校算数教育研究部 『筑波発 問題解決の算数授業』 2015 pp.11-12 (13)高大接続システム改革会議 「最終報告」 2016.3 p.4 https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/06/02/1369232_01_2.pdf 2022.2.25 (14)ベネッセ教育総合研究所 『第6回学習指導基本調査 DATA BOOK(小学校・中学校版)[2016年]』 2017.3 p.7 算数の授業では一般的に「課題把握」⇒「自力解決」⇒「集団解決」⇒「適応題」という四つの活動を時間によって区切って行っている。提案する授業デザインは,「自力解決」を終えた児童から順に考えを伝え合う「学び合い」の活動へと移り変わっていく授業展開とする。学び合いの活動は,一人は発表者,他は聞くといった形式ではなく,自力解決を終えた児童同士で学び合う相手を見つけ,ペアやグループで解の求め方やよりよい考え方について話し合うことである。つまり,従来の自力解決と集団解決の時間の使い方を児童に委ね,学習活動・学習方法を児童の判断で選ぶことができることとなる。1時間の授業の中で,解が求められるまでじっくり考える児童もいれば,問題を素早く解き終え,どのような考え方で解を求めたのかを児童同士で話し合ったり,よりよい表現の仕方や何が大切な考え方なのか67
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