小学校 教科指導(算数科) 5 これらが起こりうる原因には,一人一人の能力に適さない同一の学習活動や一斉授業による個別支援の限界,1時間の中で指導しきるという時間的制約が考えられる。一人一人に合った学習活動を提供し,十分に思考する時間を与え,全員が発表し,説明し合う機会を設ければ「思考力,判断力,表現力等」は高められるかもしれない。しかし,この1時間という時間は変えられない。とすれば,授業の展開の仕方を工夫しなければ,「思考力,判断力,表現力等」を高めることは難しいであろう。 ③「知識及び技能」に重点をおいたテストや受験 文部科学省の高大接続システム改革会議「最終報告」(13)で次のようなことが示された。 図1-4 思考判断表現をしているかを視覚化したイメージ図 (筆者の経験則より) ①「十分に思考が働いていない」 子ども ・題意が読み取れず思考が止まる(低位,中低位層) ・時間経過によって学んだことを忘れる(全層) ・思考する時間が短い(低位,中低位層) ・課題を解決した後,次の課題「待ち」になる(高位層) 指導者 ・支援できる子どもの数に限界がある ・できる子どもを更に伸ばす視点の希薄さ ・形式的に問題が解けるようにする教え方 ②「表現者が限定的である」 子ども ・限られた発表者以外は「聞く」のみで表現できない(全層) ・指導者の期待する考え方を求められ,発表しづらい(全層) ・人前で自分の意見を述べることに緊張する(全層) 指導者 ・手を挙げる子どもを中心に授業を進める の「待ち」の状態が主な要因である。また集団解決では,既に高位層の子どもは説明する力をもっており,友だちの話をただ聞いているだけという状態だと考えられる(12)。 次に,中低位層,低位層である。これらの層は,指導者の助言や個別の支援を要する子どもたちである。自力解決時には,指導者が子どもたちにヒントカードを渡したり,個別支援を行ったりするまでは,思考が十分に働き出さないのである。しかし,指導者は一人,もしくは支援指導者を入れても二人程度なので,支援できる人数に限界がある。そのため中低位層,低位層の子どもたちの思考力を十分に伸ばすことができているとはいえないだろう。また,自力解決の時間には限りがあるので,自分の考えをもたないまま集団解決の場面に移ってしまう。そのため,友だちの発表を聞くだけでわかったつもりとなり,実際には適応題などで問題が解けなかったり,答えは出せてもなぜそうなるのかを説明できなかったりするのである。 他にも,「思考力,判断力,表現力等」が高まらない理由は考えられる。筆者の経験をもとに上記の内容も含め以下に整理する。 65
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