小学校 教科指導(算数科) 4 下線部…思考,判断,表現の活動 64 【高 位 層】問題解決において様々な考え方や解決技能を習得しており,自分の考えを筋道立ててわかりやすく伝 えることができる 【中 位 層】問題解決においての考え方や解決技能を習得しているが,どの方法が良いかまでは十分に理解はできていない。自分の考えを伝えることができる 【中低位層】四則演算はできるが,問題解決の方法が過去の学びと関連させることができず,解き方がわからない。助言やヒントなど支援することで問題を解くことができる。自分の考えを伝えることが難しい 【低 位 層】四則演算や問題文の理解が難しく,指導者の個別の支援がなければ解にたどり着けない 中学校の二次方程式の問題でも同じことがいえるだろう。因数分解をすることでxの値を求めることができる。しかし,図1-3(p.3)の解の公式を使うことで式変形の過程を考えずとも答えを求めることができてしまう。 このように,算数科・数学科の教科特性として,一般化して考えられるものや公式化されたものを使って簡単に答えを求めることができるよさがある。そして,繰り返し問題を解く練習をすることによって,手続きとしての「知識及び技能」を高めることもできるだろう。しかし,この方法では,なぜその答えになるのかを理解できるまで考えないため,「思考力,判断力,表現力等」を十分に伸ばしきれないという課題も生じさせてしまうのである。 ②授業展開 現在の小学校の算数科の基本的な授業展開は,以下のように進められている。 ①【課題把握】 課題把握を行い学習の見通しをもつ ②【自力解決】 自分の考えを式や図などにかき表して問題を解く ③【集団解決】 考えたことを全体で発表し,よりよい解決方法について話し合う ④【適応題】 学んだことを生かして問題を解き,本時を振り返る それぞれの時間配分や授業の展開の仕方に差異があれども,中学校の数学科もほとんど同じである。このように授業展開の中には,しっかりと「思考力,判断力,表現力等」を培うための学習活動が設定されているのである。にもかかわらず,なぜ「思考力,判断力,表現力等」に課題が生まれるのだろうか。尾崎は表現力が身に付かない理由として表現者が限定的であることを述べている(10)(11)。集団解決で説明をする数人の子どものみ表現力が鍛えられ,他の子どもたちは発表者の考えに同調し「聞く」だけで,表現力は高まらないということである。さらに,筆者は思考力が高まらない理由として,指導者によって学習活動が制限され思考が働かない時間が多くあるからではないかと考える。学級には同じ学年とはいえ,個性や学力の面において多様な子どもが在籍している。しかし,授業となると全員が同じ課題に,しかも上記で示した活動過程で取り組むことになる。授業の1時間で,問題をすぐに解いてしまう子どももいれば,その2倍ほどの時間がかかってしまう子どももいる。そういった中,一定の流れで授業が展開されているのである。すると,学級の中で一定数の子どもたちが,十分に思考が働いていない状態で授業が進められていることとなる。 ①十分に思考が働いていない ②表現者が限定的である 「①十分に思考が働いていない」理由について筆者の経験を踏まえて説明する。高位層は1時間の中で所々思考が低下している場面がある。思考の低下は,課題が早く終わることで,次の活動に移るまで以上のことから「思考力,判断力,表現力等」が高まらない理由として,左記の2点に整理することができる。 次ページの図1-4は,四つの学力層(以下の囲み)がそれぞれどの場面で思考が働いたり,表現が行われたりするかを,筆者の経験をもとにイメージしたものである。縦軸は,問題を解いたり,なぜその解になったのかを主体的に考えたり,自分の考えを発表したりするなど,思考し判断し表現する活動を行っているかを表す。横軸は1時間の授業の時間経過を表している。
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