※図はn角形を表すため点線を用いている 多角形の頂点から各頂点に 多角形の辺上の1点から 多角形の内部の1点から 線分を引く 各頂点に線分を引く 各頂点に線分を引く 識及び技能でしかなく,数学的な見方・考え方を働かせているとはいえない。では,どのようなことが「数学的な見方・考え方」であるのか以下に述べる。 子どもたちは,小学校算数科で,どんな多角形の面積も三角形に分割することで求められることを学習している。このことが想起できれば,今回も,「三角形に分けてみてはどうか」という視点で,多角形を見ることができると考える。また,その際に今までの学習を生かし,「図や表にしてきまりを見つけてみればいいのではないか」という規則性に着目して捉える子どももいるかもしれない。この,「分割する」「規則性を見つける」ことのように,数学的な視点から事象を捉えることが数学的な見方といえるであろう。そして,この数学的な見方を働かせると,図1-1に示すような様々な考え方が出てくると予想できる。 このように,数学的な見方・考え方を使って問題を解決することで,「思考力,判断力,表現力等」が育成され,理解が伴った多角形の内角の和の公式が,他の場面でも生きて働く知識及び技能として習得されるのである。数学的な見方・考え方を働かせた数学的活動は,数学的に考える資質・能力の育成につながるだけでなく,数学や他教科の学習,日常生活や社会において問題を論理的に解決していく場面などでも広く生かされるものになっていくのである。 (2)数学的活動とは 数学的活動とは,日常生活や社会の事象,数学の事象を数理的に捉えて,算数や数学の問題を見いだし,問題を自立的,協働的に解決する過程を遂行することである(5)。また数学的活動は,単に解を求める学習活動ではなく,問題解決の過程や結果を振り返り,得られた結果を捉え直したり,新たな問題を見いだしたりして,統合的・発展的に考える活動である。例えば,上記の数学的な見方・考え方の例として紹介した授業で考えると,「それぞれの多角形(四角形,五角形,六角形・・・)の一つの頂点から対角線をひき,できた三角形の数や内角の和を求めなさい」という問題であれば,それぞれの数を数えたり,内角の和を計算したりするだけの活動となる。問いを「多角形の内角の和を求めるにはどのように考えればよいのだろうか」としたり,「調べたことから共通して考えられることは何だろう」と追発問を行ったりすることで,問題解決の過程や得られた結果から共通点を見いだし,統合的・発展的に考えていくことができるのである。 数学的な見方・考え方と数学的活動は切り離して考えるものではない。数学的な見方・考え方が働く数学的活動にするためには,課題設定を工夫し,様々な意見交流,議論など対話的な学びが生まれる授業デザインが必要となるだろう。 小学校 教科指導(算数科) 2 これら異なる複数の考え方から共通点を見いだし,「三角形に分割して内角以外の角は除けばよい」という,一般化された考え方として捉え直す。これが統合的に考えることである。そして,「多角形の内角の和がわかれば,外角の和も求められるのではないだろうか」と発展的に考える。今まで学習した知識を生かし,図などに表しながら,統合的・発展的に考えていくことが数学的な考え方といえるだろう。数学的な見方・考え方を働かせながら,知識及び技能を習得したり,習得した知識及び技能を活用したりすることにより,生きて働く知識となり,技能の習熟・熟達につながる。そして,より広い領域や複雑な事象の問題を解決するための「思考力,判断力,表現力等」が育成される。 62 図1-1 多角形の分割と内角の和の求め方 180°× (n-2) 180°× (n-1) - 180° 180°× n - 360° = 180°× (n-2) = 180°× (n-2)
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