611 R3最終稿【椙村】
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(下線は筆者が「思考力,判断力,表現力等」の高まりと受け取った文言) 小学校 教科指導(算数科) 21 することであり,指導者は一人一人の学習活動を把握することが難しくなる。指導者は三つの資質・能力に偏りがでないように,「知識及び技能」と「思考力,判断力,表現力等」が必要となる問いの工夫や理解が深まる発問,児童を見取る力などより高い指導力が求められそうである。 第2節 今後の展望 本研究で提案した個別最適な学びとなる授業デザインでは,児童が主体となり,児童自身で学習活動・学習方法を選び,児童同士の交流の繰り返しによって一人一人の「思考力,判断力,表現力等」を高められたと考える。従来の授業デザインでは正しい考え方やその考えに至る理由をおさえるために,指導者を中心とし,発言する児童とともに授業を展開していくことが多かったであろう。しかし,児童が主体となる授業は,児童の学習意欲を高め,より思考を働かせることができるのである。発達段階や児童の実態を考慮する必要はあるが,小学校算数科だけでなくどの教科においても同様に,児童が主体となる授業デザインで学習を進めることで,より児童の「思考力,判断力,表現力等」を高めることができるのではないだろうか。 本研究で提案した授業デザインでは,児童は数学的活動という学び方自体によさを感じていた。発達段階による差はあるが,わからないことがあれば過去の学習を振り返ったり,人に聞いたりすれば解決できることや,友だちと説明し合うことで理解できるようになることを実感していた。つまり,課題解決をする手段は様々あり,考えを比較したり交流したりすることで学びを深められることを学ぶことができたと考える。この学びの積み重ねが,自らの学習方法を調整する力となり,学びに向かう力へとつながっていくと考える。 児童に「算数の授業で学んだことは算数以外の場面で生かせると思ったことはありますか」というアンケートを実践後に行ったところ,「買い物で役に立つ」「特にない」と回答する児童が多くいた。「買い物に役立つ」というのは日常生活に生かせるといえばそのとおりであるが,かなり限定的である。令和3年度全国学力・学習状況調査によると「算数の授業で学習したことは,将来,社会に出たときに役に立つと思う」と肯定的に回答した児童は,小学校では92.5%であった (16)。しかし,先述した研究のア○児童の変容(良かったところ) ・「先生次何すんのー」という声が少なくなり,ノートやテストに何かしら図をかいたり,考えをかいたりすることができるようになった ・今まで,立式して終わりだったが,相手に理解してもらうために,順序立てたり,どのような言葉を使ったらよいのかを考えたりするようになった ・考えを簡潔に書けるようになってきた ・自分の考えと友だちの考えを比べながら考えていた ・相手意識をもって課題に取り組むことができるようになった(ノート作り・説明の仕方・友だちとの比較) ・どの児童も1時間思考し続けることができていた ○指導者に必要な力とは ・子どもの理解度,その割合,支援にかける時間,学び合いの時間配分,全体に共有すべき考え方など,全体を見極め瞬時に判断する力が必要 ・何を学ばせることが必要なのか,ということを考えておくことが大切 ・統合的・発展的に考えたり話し合ったりするための,課題設定や問いの工夫が必要 図4-6 研究協力員から聞き取った内容 ○児童の様子(改善点) ・問題を解けたことに満足し自分の考え方を伝えたいという気持ちが勝っていた ・間違っている考え方に納得してしまう場合がある ・自分はまだ考えることができないことにマイナスの感情をもつ子どもがいた ・子ども同士の人間関係を考慮する必要がある ・知識・技能の定着がやや弱いかもしれない ・適応題の時間でどの課題を選べばよいのかまだ理解できない子もいた ・集団解決時に必要のないGIGA端末の使い方をする子がいた 81

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