611 R3最終稿【椙村】
21/24

小学校 教科指導(算数科) 19 図4-3 アンケート結果② ているのではないだろうか。 I児やJ児,K児の回答からは,友だちの様々な数学的な見方・考え方を学ぶよさや,協働的な学びの楽しさを感じたことがわかる。思考を働かすためには,どのようなことにおいても「意欲」が欠かせない。従来の授業デザインでは指導者が学習活動の裁量権を握っていたが,H児やN児の発言からわかるように,自分のペースで学びを進められることが学習意欲の高まりにつながったといえそうである。学習意欲の高まりが思考を働かせることにつながり,その積み重ねによって,L児やM児のように自分の成長として感じ取ることができたのではないだろうか。 提案する授業デザインでの実践では,じっくり時間をかけてでも自分で問題を解こうとしたり,学び合いの中でわかりやすく伝える方法や互いの考え方の共通点について考えたりと,学習進度に応じて児童自身のめあてが変わった。また,共有フォルダから過去の考えを参考にしたり,人に聞いたりするなど,自分で学習方法を選択し学びを進めることができた。つまりこの授業デザインによって個別最適な学びとなる授業になったといえるだろう。個別最適な学びとなる授業によって,児童の学びに向かう意欲が高まり,常に思考し判断し表現し続けることにつながったと考える。 一方で,学年が下がるほど自分たちで理解を深める話合いができていたとはまだいえなかった。他にも,理解する力が不十分なため,学び合いの中で間違った考え方が広まってしまう場面もあった。集団解決の時間を多めにとったり,学び合いの最中に正しい方向に理解が深まる発問を入れたりするなど,児童の発達段階や実態,授業中の児童の理解度に応じて授業デザインを適宜工夫する必要性があることがわかった。 ②「思考力・判断力・表現力」の高まり ○自分の考えをもつ 図4-3は「一人で問題をとけましたか」という設問で行ったアンケート調査の結果である。児童の半数以上が自分の考えをもつことができているのは,思考する時間を確保した授業デザインによるものであろう。また,共有機能を使ったヒントカードの提供や指導者の個別の支援によって,ほぼ全ての児童に自分の考えをもたせることができたといえる。また,番号3に示したように,考え方ボックスや共有フォルダから過去の学びを生かす児童もいた。研究協力員からは「ヒントカードを自分たちで見られることで支援にいく人数が減った」という声も聞くことができた。GIGA端末の特性を生かした個に応じた指導によって,ほとんどの児童が思考を働かせ,自分の考えをもつことにつながったといえる。 ○筋道立てて考えたり柔軟に表現したりする 実践後,児童に「算数の授業で自分ができるようになったと思うこと」について自由記述のアンケートを行った。その回答の一部を次ページの図4-4に示す。O児が答えたように式や言葉でうまく説明できなくても図や絵を使えるようになったと答える回答が複数みられた。 また,「夏休み前と比べて自分の考えを人に説明できましたか」という問いでは,P児のように「図や表などを使って説明することができるようになった」と多くの児童(66/106人)が答えている。「とりあえずたし算をしてみる」「意味は分からないけれどかけ算をしてみる」といった当てもののような考えではなく,第3章の図3-1(p.12)や図3-4(p.14)に示すように式や言葉,絵や図などの数学的な表現を使って自分の考えの根拠を示すことができるようになった。 児童らは,自分の考えを伝え合う機会が増えることにより,相手意識をもって自分の考えをわかりや 79

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る