第1節 児童・研究協力員へのアンケート及び聞き取り調査から (1)授業デザインと手立てによる児童の変容 ①学習意欲の高まり 実践前と実践後で,特に思考を働かせている場面についてのアンケートを行った。アンケートの各項目の数値は実践した全学年の合計値である。図4-1からは,設問2「どのように解けばいいのかを考えているとき」を除いて,一生懸命考えたと思う場面が全体的に増加した(以下,各場面は図4-1の設問番号によって表す)。設問3,4の場面では,実践前と比較して,より思考を働かせるようになったことが読み取れる。 次に,従来の授業の進め方と,今回行った授業の進め方とではどちらが良いかを尋ねたところ,多くの児童が提案した授業の進め方と答えた。その理由をそれぞれの学級で聞き取ったところ,以下のような回答が得られた(図4-2)。 かは,児童の発達段階を考慮する必要があるだろう。ただ,自分で課題を選択できるということは学習意欲を生み出し,思考を働かせることにつながったといえる。学年が上がるにつれて,何を目的として課題を選ぶのか,自分に合った学習方法は何なのかといった,学習に関する自己調整をしながら課題を選択できるようになると考える。 F児やG児の回答からは,提案する授業デザインによって自分の考えを伝えやすくなるということが読み取れる。これは第1章第2節(2)②で述べた,表現力が高まらないと考えた理由の一つが改善されたのではないだろうか。ただ,この意見から表現力が高まったとはいえない。しかし,H児の回答は,「わからない」と感じたときにその場で何度も話し合えることが,理解の深まりにつながることを示し 小学校 教科指導(算数科) 18 第4章 研究の成果と課題 図4-1 アンケート結果① 78 図4-2 子どもへの聞き取り F児:みんなの前だと緊張するけれど,友だちにアドバイスをもらえたり,話しやすくなって理解しやすくなったから G児:発表が苦手な人の考えも知れるのがよかったから H児:今まで全体で交流することが多かったけれど,一人一人の友だちと交流できるようになって,1つわからないことがあってもすぐに聞けることで,わかることにつながったし,算数が好きになったから I児:友だちの考えでいいなぁ,次に生かせるなぁと思うことが今までの授業より増えたから J児:同じ表を使っていても式とか考え方がちがうときに,説明をきいてわかることが楽しかったから K児:交流しているときに自分の考えがみんなに伝わったときや,新しい考えが出てきて新しい解き方がわかったときが楽しくなった L児:図や考え方をノートにまとめて,説明できるようになり,授業の始めから終わりまで一生懸命考えることができるようになったから M児:わかりやすく伝えられるように一回一回のやりとりから改善点を考えてわかりやすく伝えられるようになったから N児:今までは先生にGIGA端末から資料を送られて問題を解くだけだったけれど,動画作りとか,自分たちでやっていることが楽しかった。動画作り以外にも,友だちと話し合いながら,ここはあぁじゃないかとか,「これはこうだ」と決めつけられずに自分たちで考えてできるのがよかった (下線は筆者による)
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