611 R3最終稿【椙村】
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小学校 教科指導(算数科) 15 図3-6 E児の考え(三角形4つ→長方形÷2) 中で,正しい答えとその根拠が明らかになり,筋道立てて説明できる力につながっていくことがわかった。 (3)統合的・発展的に考える力を求めて ~5年生「面積」の実践から~ ①問題と学習のねらい B校の5年生「面積」の単元で右に示す二つの多角形の面積をどのように求めればよいかという課題を出した。この授業では四角形と五角形の面積の求め方から共通点を見いだし,統合的に考えることをねらいとした。そのため,学び合いの場で,面積の求め方の説明に終始しないために,統合的に考えることを引き出せる問いの工夫が必要であった。そこで,問題解決的な学習となるようなめあてにすることで,児童が思考の過程に着目し,共通点や相違点について話し合いが行われるようにした。問題解決的な学習となるようなめあてと提案する授業デザインによって,児童だけで統合的・発展的に考えたり話し合ったりすることができるのかを見取った。 ②授業の実際と児童の様子 自力解決では,いろいろと線を引きながら面積の求め方について思考を働かせていた。自力解決が開始して5分ほどで学び合いに向かう児童が出始めた。全体的に四角形の面積は素早く求めることができていたが,五角形は底辺がなかなか決まらず苦戦している児童が数人見られた。指導者はそれぞれ児童の普段の様子から,学習意欲が減退する一歩手前で,学び合いに移行するよう一人一人に声をかけていた。考え込み過ぎて思考を止めてしまうのではなく,どうしてもわからなければ人に聞くというごく自然な形で協働的な学びを促したのである。ヒントカード以外にも以前に学習した考え方を参考にしようと,考え方ボックスや共有フォルダから探る児童もいた。 その後,話合いを重ね,どんな多角形でも三角形や四角形に分ければ面積が求められることを導き出していた。話し合う場があるからこそ,様々な数学的な見方・考え方に出会うことができ,その考えが正しいかを検証し,統合的に考えることができていた。 授業の最後には,次ページの図3-8に示すように,ほとんどの児童が問いに対するまとめを自分なりに書くことができていた。めあての工夫と思考し判断し表現する時間の十分な確保が,一人一人の思考を働かせ,統合的・発展的に考えることのできる数学的活動になったといえるだろう。 学び合いの始めは,面積の求め方と正しい答えについて話し合っていたが,徐々に「はかせ(はやい,簡単,正確)」な方法はどれかという話に変わっていった。図3-6はE児の考えである。一つ一つの三角形の面積を求めていたが,もっと計算が楽な考え方はないかと考える中で,四角形の面積は,四角形の周りに囲った長方形の面積の半分になっていることに気が付いた。周りにいた児童が興味を示し近寄ってきた。そのときの会話を次ページの図3-7に示す。E児の発見は説明を聞いた児童たちの考え方を広げた。それだけではなく,その考え方が五角形にも適用できるのではと類推し始めたのである。結果,五角形には適用できなかったが,児童たちの中で統合的に考えようとする姿が見られた。【めあて】 多角形の面積はどう考えれば求められるだろう 75

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