611 R3最終稿【椙村】
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【考え方①】 小学校 教科指導(算数科) 13 2÷4=0.5 20÷4=5 ×10 ÷10 を説明していた。学び合いの中で,答えを「3/10」にしている児童がいた(以下,A児)。A児は「3/5」と考えた友だちと説明し合ったが,どちらも自分の考えが正しいと考えていた。様々な友だちと説明し合う中で,A児は「3/5」が正しい答えであることがわかった。しかし,なぜ「3/5」になるのかは理解できていない様子であった。もう1人,答えが「3/10」と考えている児童(以下,B児)がいた。B児もA児と同じように,自分の考えが正しいと考えていた。説明し合う中で,ある友だちに「分母もたしたら一生1にならへんやん」と一言言われ,その説明が「3/5」になる根拠とはならないものの,B児にとっては自分の考え方は間違いであると納得させられる言葉であった。B児に個別で話を聞くと,「なぜ3/5になるのかは話を聞いてもわからなかったけれど,いつまでたってもジュースがいっぱいにならないので多分答えは3/5だと思う」と答えた。自分の考えを説明することで自分の間違いに気付き,考え直してまた説明するといった場面が教室のあちこちで見られた。また,説明する中で,「まず,そして,だから」といった順序立てる言葉も聞こえてきた。学び合いの終盤にはほとんどの児童が「3/5」が正しい答えということがわかってきた。しかし,理由を正しく理解し,必要な内容を全て含んで説明できる児童は多くなかった。また,自分の考えを説明したいという思いが先行し,他者にわかってもらおうという思いで説明したり,なぜその考え方になったのか相手に問い直したりすることは少なかった。 集団解決では,共有された児童の考えをもとに,「3/5」になる理由や「3/10」にならない理由を全体で考え理解へとつなげた。授業後A児とB児になぜ「3/5」になるのかを聞いてみた。両者ともに,単位分数のいくつ分かで説明することができていた。A児は「友だちの説明を聞いてもなんで3/5になるかはわからへんかったけど,みんなの話(集団解決)を聞いたり黒板を見てわかった」と答えていた。 学び合いの場面で自分の考えを説明することで間違いに気が付いたり,いろいろな図の表し方を知ったりすることができたが,理解が深まるところまでたどり着けたとはいえない。児童らは集団解決で「なるほど」と理解することも少なくなかった。3年生においては集団解決の時間を少し長くとる方が,児童らの理解につながることがわかった。自分の考えの根拠を説明する力はまだまだ身に付いたとはいえない。しかし,ヒントカードや個別の支援などの手立てと,一人で考える時間を十分に確保することによって,低位層の児童も含め,常に思考を働かせ絵や図を使いながら自分の考えをもてるようになったことは,実践の成果として捉えている。 (2)考えの根拠を明らかにし筋道立てて説明できる力を求めて ~4年生「小数のかけ算やわり算」の実践から~ ①問題と学習のねらい A校の4年生「小数のかけ算やわり算」の単元で右の問題を扱う授業である。この授業では(整数,小数)÷(整数)で商が1より小さくなる場合の計算の仕方を考え,その根拠を説明できるようになることをねらいとした。この問題で想定できる考え方は,右に示す二つである。児童には,考え方①のように「10倍したから最後に÷10をする」という意味理解を伴わない形式的な処理で終わらせないようにしたい。学び合いの中で,「20÷4」や「0.5」の意味をどこまで理解し,説明できるようになるのかを見取った。 ②授業の実際と児童の様子 課題把握を終えると,すぐに式に表す児童もいれば,じっくりと考える児童もいた。指導者は数分時間をおいてから学習支援ソフトの共有機能を使って全員にヒントカードを配信した。ヒントカードには考える上で重要となる部分に黒塗りをしている。すぐに答えが見えてしまうと写すだけの作業になり,思考することにはならないからである。しかし,黒塗りは取り外すことができるようにしている。配信【問題】2mのひもを同じ長さに切って4人で分けます。1人分の長さは何mになりますか。 【考え方②】 2÷4 → 20÷4=5 2を0.1が20こ分と考える 2÷4=0.5 5は0.1が5こ分という意味 73

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