小学校 教科指導(算数科) 8 68 図2-2 ヒントカードの例 を統合的に考えたりする学び合いの活動に,より多く時間をかける児童もいるだろう。自力解決の時間で問題を解き終えてから,集団解決に移るまで「待ち」の状態であった児童は,素早く次の学びへ進むことができる。集団解決で発表を「聞く」だけの状態になっていた児童も,自分の考えを伝え合う機会が増える。このように,自分の学習進度に合った活動を自身で選択し学習を進める授業デザインにすることで,全ての児童は常に思考し判断し表現し続けることができると考える。この授業デザインによって課題に挙げられた「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力を伸ばすことができるのではないだろうか。 ただし,留意しなければならないのが,思考する時間や表現する機会を増やしただけでは,十分な考える力や説明する力が付くとはいえない。その力を付けるには,やはり指導者の手立てが必要となるだろう。その方法については以下に述べる。 (2)学習活動における児童への手立て 新たな授業デザインを取り入れることで,児童は自身で学習活動を選択し,自ら学びを進めることができなくてはならない。そのために指導者は,児童の学習進度にあった学習活動を提供し,様々な手立てを考えていく必要がある。そこで,自力解決や学び合いの場面で,児童が思考し判断し表現し続けることを支援する具体的な学習活動や手立てについて述べる。 ①主体的に自己の考えをもつ ○ヒントカード 相手に自分の考えを筋道立てて説明する力など,「思考力,判断力,表現力等」を育成するためには,まず,児童にあらかじめ自己の考えをもてるようにすることが重要である。今までは指導者が,児童の理解度に応じてヒントカードを渡したり,答えに直結しない適度に考えさせる助言を行ったりしていた。しかし,指導者が一人一人見て回る支援方法では,低位層,中低位層の児童を中心に「待ち」の状態になり,思考が十分に働き出さないこともある。そこで,GIGA端末を活用し,ヒントとなる資料を準備し,児童自ら学びを進められるようにする。その例を図2-2に示す。 【問題】 砂糖と小麦粉の重さの比を2:5にしてケーキを作ります。 小麦粉を150gにすると,砂糖は何グラム必要ですか。 初めのヒントカードは考え方のきっかけをつくる程度のものを用意する。ヒントカードが進むにつれて答えの求め方に近付いていく。児童は,答えにたどり着く見通しが立った時点で,自分で式や図に表して考えていくようにする。理解度に応じたヒントは思考を働かせるきっかけをつくり,全ての児童が自己の考えをもつ手立てになると考える。また,そのヒントカードは,思考力や表現力となる筋道立てて考える力や説明する力の育成にもつながると考える。スモールステップとなるヒントカードをつなげて考えていくことで,筋道立てた考え方になり,自分の考えを他者に伝える際にも,このヒントカードを頼りに説明することができる。児童が自身の理解度に応じてヒントカードを選択し思考を働かせることは,自分の考えをもつことになり,表現力をつける基盤にもなると考える。
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