613 R3最終稿【久保田】
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第3節 学習の自己調整を進める三つの段階 先行研究で伊藤は自己調整学習を①予見の段階 ②遂行コントロールの段階 ③自己省察の段階の三つの段階で構成される循環的なプロセスとしている。この三つの段階のそれぞれに動機づけ,学習方略,メタ認知の三つの要素が関係し,このサイクルの質を高めていくことで,より自律的で深い学習ができるようになる(12)としている。 (1) 予見の段階 予見の段階では,目標を設定し,計画を立てることが必要となる。その際には,自分自身の学習状況を客観的に捉え,学習の課題を分析することが重要となるため,メタ認知的方略を活用することになる。そして,目標をどこに設定するのか,どのように学習を進めていくのかといった学習の順序や内容,方略のプランニングを行っていく。この時,学習についてのやる気を持続することができるように,無理のない目標や計画を立てることで「自分ならできる」といった自己効力感をもつことが重要である。また,生徒自身が学習に対して興味をもつことや,学習することの有用性や必要性を意識するといった動機づけを高めた上で計画を立てることも大切なことである。 (2) 遂行コントロールの段階 遂行コントロールの段階では,予見の段階で自身が作成した計画をもとに学習を進めていく。その際には計画した学習の順序や内容,方略が目標の達成に向けて最適なものかをモニタリングし,コントロールしていくことが必要となる。実際の学習場面では,予見の段階でプランニングしたとおりに学習が進むとは限らない。日々の学習をモニタリングすることによって日常的に学習を調整することが出てくるであろう。そのため,多様な学習方略(本研究では認知的方略,自己動機づけ方略,メタ認知的方略とする)を活用することが必要となってくる。 例えば,最初にプランニングした学習方略では学習の理解が深まらないと判断(メタ認知的方略)したら,図や表などを使った方略(認知的方略)に切り替えればよいであろう。これまでの学習内容と関連付けることで理解を深めるといった方略(認知的方略)を選択してもよい。時には,自分自身の判断だけでなく,友だちや指導者といった他者からのアドバイスも取り入れながら,自分に合った学習方略を選択し直したり,新たな学習方略を獲得したりしていくことも重要である。 また,自身のやる気が低下している場合は学習する順序を変えたり,休憩をしたりする(自己動機づけ方略)ような調整を行う必要もある。 (3)自己省察の段階 自己省察の段階では,学習をある程度進めた上で,これまでの計画や学習方略などを分析し,目標への到達状況を自己評価することが必要となる。この段階でもメタ認知的方略が必要となり,結果に対する原因の分析や行ってきた学習方略の修正の必要性を確認していく。そして,当初の目標が達成できた場合は自己調整しながら進めてきた学習の成果を生徒自身が実感することができるであろう。それにより,高い自己効力感をもつことができ,次の学習への動機づけにもつながっていくと考えられる。一方で,目標を達成できなかったという場合もあるであろう。その際は,進めてきた計画や学習方略の問題点を洗い出し,再び予見の段階へと循環し,修正を加えた上で学習の意欲が低下してしまわないように目標や計画を再設定して学習を進めていくことが必要となる。 このような三つの段階を循環させるプロセスにおいて,動機づけ,学習方略,メタ認知の三つの要素を109 図1-2 伊藤崇達「自ら学ぶ力」を育てる方略より 筆者が編集 中学校 情報教育 5

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